いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する。
いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点
民法91条,民法166条1項,民法666条
判旨
自動継続特約付き定期預金の払戻請求権の消滅時効は、初回満期日ではなく、自動継続の取扱いがされることのなくなった最後の満期日が到来した時から進行する。
問題の所在(論点)
自動継続特約付き定期預金において、預金払戻請求権の消滅時効の起算点(「権利を行使することができる時」)はいつか。初回満期日か、それとも自動継続が終了する最終満期日か。
規範
消滅時効は「権利を行使することができる時」から進行する(民法166条1項)。自動継続特約は、満期時に何ら行為を要さず新契約を成立させ弁済期を更新する合意である。特約が維持されている間は満期日間は払戻請求をなし得ないため「法律上の障害」があるといえる。また、預金者が継続停止の申出を行うか否かは契約上の自由であり、この申出が可能であることを理由に早期の時効進行を認めることは契約の趣旨に反する。したがって、時効は「自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時」から進行すべきである。
重要事実
預金者Xは昭和61年、信用組合に対し期間1年の自動継続定期預金(継続10回限度)を預け入れた。最初の満期日は昭和62年11月19日であった。預金債務を承継した銀行Yは、Xが平成15年に払戻しを請求した際、初回満期日から10年が経過しているとして消滅時効を援用した。第1審および原審は、Xが初回満期日までに継続停止の申出をすれば払戻しを受けられたのであるから、初回満期日から時効が進行するとしてYの主張を認めたため、Xが上告した。
あてはめ
本件預金契約には10回の自動継続特約が付されていた。この特約によれば、満期が来るたびに自動的に新たな弁済期が設定され、特約が有効な間は預金者は任意に払戻しを請求できない状態にある。Xが初回満期日前に「継続停止の申出」をすれば払戻しは可能であったが、これは契約上Xの自由に委ねられた行為である。よって、このような行為(申出)を行うことを前提に初回満期日から時効が進行すると解すべきではない。本件では10回の継続を経た平成9年11月19日の満期日において初めて自動継続が終了した。したがって、この時が時効の起算点となる。
結論
本件預金の消滅時効は、最後の自動継続後の満期日である平成9年11月19日から進行する。平成15年の提訴時点では10年の時効期間は経過しておらず、消滅時効は完成していない。
実務上の射程
自動継続定期預金の時効起算点を確定させた重要な判例である。答案上は、民法166条1項の「法律上の障害」の有無を検討する際、契約の性質(自動更新の合意)および当事者の意思(更新への期待)に照らして判断する枠組みとして活用できる。特に「一方的な意思表示で排除可能な期限」が直ちに時効の進行を促すものではないことを示す際に有用である。
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