いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する。
いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点
民法91条,民法166条1項,民法666条
判旨
自動継続特約付き定期預金における預金払戻請求権の消滅時効は、解約の申入れ等により自動継続の取扱いがされなくなった後に到来する最初の満期日から進行する。
問題の所在(論点)
自動継続特約付き定期預金契約において、預金払戻請求権の消滅時効はいつから進行するか(民法166条1項の「権利を行使することができる時」の意義)。
規範
消滅時効は権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)。自動継続特約付き定期預金契約においては、特約の効力が維持されている限り、満期日の経過により新たな満期日が弁済期となることを繰り返すため、満期日までは預金払戻請求権を行使できないという法律上の障害がある。預金者が継続停止の申出を行って満期日に払戻しを受けるか否かは預金者の自由に委ねられており、初回満期日から時効が進行すると解することは契約の趣旨に反する。したがって、時効の起算点は、解約の申入れ等によって自動継続の取扱いが終了した後に到来する最初の満期日であると解すべきである。
重要事実
預金者(被上告人)は、昭和62年に信用組合との間で、期間1年、自動継続特約付きの定期預金契約を締結した。平成14年8月、預金者は信用組合(営業譲渡により上告人が承継)に対し預金の解約を申し入れたが、組合側は既に弁済済みであると主張して拒絶した。預金者が平成15年6月に払戻しを求めて提訴したところ、銀行側は、預金債権の消滅時効は昭和63年の初回満期日から進行し、既に10年の経過により完成していると主張してこれを援用した。
あてはめ
本件預金契約には、満期日に前回と同一期間の契約として自動的に継続され、継続を停止するには満期日までに申出を要する旨の特約がある。この特約によれば、解約申入れがあっても直ちに払戻しを受けることはできず、その後に到来する満期日において継続が停止されて初めて払戻しが可能となる。本件では、平成14年8月の解約申入れ後、最初に到来する満期日は平成15年2月23日である。この日において初めて自動継続の取扱いが終了し、預金払戻請求権の行使を妨げる法律上の障害が解消されたといえる。
結論
本件預金払戻請求権の消滅時効は、解約申入れ後の最初の満期日である平成15年2月23日から進行する。したがって、提訴時点で時効は完成していない。
実務上の射程
自動継続特約が存在する限り、事実上、預金者が解約の意思表示をしない限り時効が進行しないことを示した。銀行側からの時効援用を極めて困難にする判断であり、預金者保護の要請が強い事案において「権利を行使することができる時」を厳格に解釈する際の指針となる。
事件番号: 昭和54(オ)296 / 裁判年月日: 昭和54年9月25日 / 結論: 棄却
定期預金の期限前払戻を請求した者が、預金証書と届出印鑑を所持しているほか、年末資金として預金の一部を必要とすることと残額を再び預け入れることを申し入れ、払戻請求書に預金者の住所をほぼ正確に記載したなど原判示の事実関係のもとでは、払戻しをした銀行の係員に過失がなく、払戻は債権の準占有者に対する弁済として有効である。