会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があった場合において,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって上記の者の解任請求をすることは許されない。
会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者に対する解任の訴えの許否
会社法346条1項,会社法346条2項,会社法854条
判旨
会社法346条1項に規定する役員権利義務者の職務執行に不正行為等があった場合でも、同法854条を適用・類推適用して解任請求をすることはできない。役員権利義務者の排除には、仮役員の選任申立てによるべきである。
問題の所在(論点)
会社法346条1項により役員としての権利義務を有する者(役員権利義務者)に対し、同法854条1項に基づく役員の解任の訴えを提起すること、または同条を類推適用して解任を請求することは認められるか。
規範
会社法854条の解任請求の対象は「役員」に限定され、役員権利義務者は含まれない。役員権利義務者の権利義務は「新たに選任された役員(346条2項の仮役員を含む)が就任するまで」存続するとされているため、株主は仮役員選任の申立てによってその地位を失わせるべきであり、訴えによる解任請求は法の予定するところではない。
重要事実
上告人は、退任後も会社法346条1項に基づき役員としての権利義務を有する役員権利義務者について、その職務執行に関し不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があるとして、同法854条に基づき(または類推適用により)解任の訴えを提起した。
あてはめ
会社法854条の文言上、対象は「役員」とされ、役員権利義務者を含む規定はない。また、役員権利義務者に不正行為等がある場合、株主は同法346条2項に基づく「仮役員」の選任を申し立てることが可能である。仮役員が選任・就任すれば、同条1項により役員権利義務者は当然にその地位を失う。このように、会社法は仮役員選任という別異の手続きによる解決を予定しており、訴えによる解任を認める必要性・根拠は存在しないと評価される。
結論
役員権利義務者に対する会社法854条の適用および類推適用は認められない。したがって、本件解任請求は許されない。
実務上の射程
役員権利義務者の不適切な職務執行を止めるための手段として、解任の訴えを選択することは誤りであり、346条2項の仮役員(一時役員)選任申立てを選択すべきであるという実務上の指針を示す。役員の職務執行停止・職務代行者選任の仮処分(民保法23条2項等)の可否を検討する際の前前提としても重要な判断である。
事件番号: 昭和39(オ)1435 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人を当事者としない訴によつて当該法人の代表者たる地位の確認を求めることは、即時確定の利益を欠き、許されない。
事件番号: 昭和41(オ)868 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
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一、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。 二、憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為…