学校法人の理事会が,人事院勧告に準拠して給与規程を改定し,教職員の月例給を引き下げることを決定した上,12月期の期末勤勉手当につき,改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の4月分から11月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた場合において,(1)期末勤勉手当の支給については,給与規程に「その都度理事会が定める金額を支給する。」との定めがあるにとどまり,具体的な支給額又はその算定方法の定めがないこと,(2)前年度の支給実績を下回らない期末勤勉手当を支給する旨の労使慣行が存したなどの事情もうかがわれないこと,(3)これに先立つ理事会における議決で,期末勤勉手当の算定基礎額と乗率が一応決定されたものの,人事院勧告を受けて後に理事会で正式に決定する旨の留保が付されていたことなど判示の事情の下では,上記調整をする旨の決定は,既に発生した具体的権利である期末勤勉手当の請求権を処分し又は変更するものであるとはいえず,この観点から効力を否定されることはない。
学校法人の理事会が,人事院勧告に準拠して給与規程を改定し,教職員の月例給を引き下げることを決定した上,12月期の期末勤勉手当につき,改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の4月分から11月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた場合において,上記調整をする旨の決定がその効力を否定されることはないとされた事例
労働基準法11条,労働基準法24条1項,労働基準法89条4号
判旨
賞与の具体的請求権は、就業規則等に算定方法の定めがなく「理事会が定める」とされる場合、理事会の支給決定により初めて発生する。また、長年の慣行に依拠した調整による労働条件の不利益変更は、増額時との衡平の観点から合理性を有する場合、その効力を否定されない。
問題の所在(論点)
1.就業規則に具体的算定方法がない場合の賞与請求権の発生時期(具体的権利性の有無)。 2.人事院勧告に準拠して行われた賞与の減額調整が、労働条件の不利益変更として合理性を有するか。
規範
1.賞与(期末勤勉手当)の具体的請求権は、就業規則等に金額や算定方法の定めがなく、支給の都度決定する旨の定めがあるにとどまる場合、決定機関(理事会等)による支給決定によって初めて具体的権利として発生する。 2.労働条件の不利益変更を伴う決定であっても、長年の慣行として人事院勧告に基づき増額・減額の遡及的調整が行われてきた等の事情があり、増減両面での衡平が保たれている場合には、当該変更は合理性を有するものとして効力を認めることができる。
重要事実
学校法人Xの給与規程には、期末勤勉手当を「その都度理事会が定める金額を支給する」とあった。Xは長年、人事院勧告に倣って給与改定を行ってきたが、平成14年・15年度、5月理事会で一旦提示した支給乗率を、その後の人事院勧告による月例給引下げ等に合わせて11月理事会で下方修正(本件調整)した。教職員Yらは、本件調整は既に合意された労働条件の不利益変更であり、同意がないため無効であるとして差額の支払を求めた。
あてはめ
1.本件では規程に具体的算定方法がなく、5月理事会の決定も11月での正式決定を留保したものであった。したがって、本件調整を含む11月理事会の決定以前に具体的請求権は発生しておらず、既存の権利を処分・変更するものではない。 2.仮に5月の提示が労働条件の内容となっていたとしても、Xは長年、人事院勧告に基づき4月分に遡って増額調整を行ってきた。増額時のみ遡及調整を行い、減額時にこれを許容しないのは衡平を欠く。したがって、勧告に倣った本件調整は合理性を有し、不利益変更としても有効である。
結論
本件各期末勤勉手当の具体的請求権は11月理事会の決定により初めて発生したものであり、また本件調整には合理性が認められるため、Yらの請求は認められない。
実務上の射程
賞与の具体的権利性の発生時期に関するリーディングケース。就業規則の文言だけでなく、事前の理事会決議の性質(留保の有無)や、過去の支給慣行(人事院勧告との連動性)が判断材料となる。答案上は、まず具体的請求権の発生有無を論じ、予備的に労働契約法10条(本判決当時は法理)の合理性判断の枠組みで、労使間の衡平性を考慮する流れで活用する。
事件番号: 平成19(受)478 / 裁判年月日: 平成19年11月16日 / 結論: 棄却
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