自動車総合保険契約の人身傷害補償特約が,「自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により被保険者が身体に傷害を被ること」を保険金支払事由と定め,被保険者の疾病によって生じた傷害に対しては保険金を支払わない旨の規定を置いていない場合,自動車の運行に起因する事故等が被保険者の疾病によって生じたときであっても,保険者は保険金支払義務を負い,保険金の支払を請求する者は,上記事故等と被保険者がその身体に被った傷害との間に相当因果関係があることを主張,立証すれば足りる。
自動車総合保険契約の人身傷害補償特約が,「自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により被保険者が身体に傷害を被ること」を保険金支払事由と定め,被保険者の疾病によって生じた傷害に対しては保険金を支払わない旨の規定を置いていない場合に,保険金の支払を請求する者が主張,立証すべき事項
商法第2編第10章 保険,民法91条,民訴法第2編第4章第1節 総則
判旨
自動車保険の人身傷害補償特約における「外来の事故」とは、被保険者の身体の外部からの作用による事故を指し、疾病に起因する意識障害等により事故が発生した場合であっても、これに含まれる。保険金請求者は、運行事故と傷害との間の相当因果関係を立証すれば足り、事故の発生原因が身体疾患等の内部的原因でないことまで立証する責任は負わない。
問題の所在(論点)
人身傷害補償特約における保険金支払事由としての「外来の事故」に、被保険者の疾病(内部的原因)によって惹起された事故が含まれるか。また、その場合の立証責任の範囲が問題となる。
規範
「外来の事故」とは、文言上、被保険者の身体の外部からの作用による事故をいう。特約の構造として、疾病免責条項が存在せず、重大な過失がない限り保険金が支払われる趣旨である場合には、たとえ運行事故が被保険者の疾病によって生じた場合であっても「外来の事故」に該当する。したがって、請求者は運行事故と傷害との間の相当因果関係を主張・立証すれば足り、事故原因が内部的原因(疾病等)でないことの立証は不要である。
重要事実
被保険者Aは、狭心症の既往症があった。Aは自動車を運転中、緩やかな下り坂の交差点を回避措置を執らず直進し、ため池に転落してでき死した。Aの相続人らが人身傷害補償特約に基づき保険金を請求したが、保険会社は「事故はAの狭心症発作という内部的原因によるもので『外来の事故』に当たらない」と主張。なお、当該特約には疾病免責条項は存在しなかった。
あてはめ
本件特約の文言上、「外来の事故」は身体外部からの作用を指す。本件事故は「車両ごとため池に転落した」という外部的態様を有しており、外来性を備える。仮に転落の原因が疾病による意識障害であったとしても、特約に疾病免責条項がない以上、これを支払対象外とする根拠はない。また、疾病による事故もカバーする趣旨の特約である以上、請求者に「疾病等の内部的原因ではないこと」の立証を求めるのは、特約の構造及び趣旨に反する。Aは本件事故(転落)という直接の結果としてでき死しており、相当因果関係が認められる。
結論
本件事故は「外来の事故」に該当し、保険会社は保険金支払義務を負う。原審が請求者に内部的原因の不存在までの立証を求めたのは法令の解釈を誤ったものであり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
傷害保険や特約における「外来性」の要件について、事故の「原因」ではなく「態様」に着目して判断すべきことを示した。疾病免責条項の有無によって規範の適用が変わる可能性がある点に注意が必要だが、実務上、請求者の立証負担を軽減する重要な先例である。
事件番号: 平成18(受)2053 / 裁判年月日: 平成19年5月29日 / 結論: 破棄自判
自家用自動車保険契約普通保険約款の搭乗者傷害条項に,「被保険自動車の正規の乗車装置等に搭乗中の者が,被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被り,その直接の結果として死亡したこと」が死亡保険金の支払事由であると定められている場合において,被保険自動車の運転者が,夜間,高速道路において自損事…
事件番号: 平成23(受)1043 / 裁判年月日: 平成25年4月16日 / 結論: 破棄差戻
吐物の誤嚥は,傷害保険普通保険約款において保険金の支払事由として定められた「外来の事故」に該当する。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成17(受)2058 / 裁判年月日: 平成18年6月6日 / 結論: その他
「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする自動車保険契約の約款に基づき,車両の表面に傷が付けられたことが保険事故に該当するとして,保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わない。