災害補償共済規約が「被共済者が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたこと」を補償費の支払事由と定め,これとは別に「被共済者の疾病によって生じた傷害については補償費を支払わない」との規定を置いている場合,補償費の支払を請求する者は,被共済者の身体の外部からの作用による事故と被共済者の傷害との間に相当因果関係があることを主張,立証すれば足り,上記傷害が被共済者の疾病を原因として生じたものではないことを主張,立証すべき責任を負わない。
災害補償共済規約が「被共済者が急激かつ偶然の外来の事故で身体に傷害を受けたこと」を補償費の支払事由と定めている場合,補償費の支払を請求する者は,被共済者の傷害が同人の疾病を原因として生じたものではないことの主張立証責任を負うか
商法第2編第10章 保険,民法91条,民訴法第2編第4章第1節 総則
判旨
災害補償共済契約において、共済金請求者は、傷害が「外来の事故」によることの主張立証責任を負うが、その内容は身体外部からの作用と傷害の因果関係で足り、疾病等の内部的原因の不存在まで立証する必要はない。
問題の所在(論点)
共済規約上の「外来の事故」の意義、および同要件に関する主張立証責任の範囲。特に、疾病等の「内部的原因」が関与していないことの立証責任を誰が負うか。
規範
「外来の事故」とは、文言上、被共済者の身体外部からの作用による事故を指す。共済規約が「外来の事故」を支払事由とする一方で、別途「疾病」を免責事由として規定している場合、請求者は外部からの作用と傷害との相当因果関係を主張立証すれば足り、傷害が疾病を原因としないことまで主張立証する責任を負わない。
重要事実
パーキンソン病の診断を受けていたが食事制限はなかった高齢の被共済者Aが、昼食の餅を喉に詰まらせて窒息し、低酸素脳症による後遺障害を負った。共済規約には、支払事由として「急激かつ偶然の外来の事故」による傷害、免責事由として「疾病等によって生じた傷害」の規定があった。共済会側は、本件事故はAの疾病(えん下機能障害)に起因するものであり「外来性」を欠くと主張して争った。
あてはめ
本件事故は、身体の外部にある「餅」を喉に詰まらせたという外部からの作用によるものであり、これと低酸素脳症による傷害との間に相当因果関係が認められる。規約の構造上、「外来の事故」は外部からの作用を意味し、疾病の関与は免責事由に属するため、請求者は疾病の不存在を立証する必要はない。本件では事故が疾病によって生じたと認めるに足りる証拠もなく、外来性の要件を満たすと判断される。
結論
本件事故は「急激かつ偶然の外来の事故」に該当し、請求者は疾病の不存在を立証せずとも補償費の支払を請求できる。
実務上の射程
損害保険や共済契約の「外来性」の立証責任に関するリーディングケース。請求者は「外部からの作用」との因果関係を示せば足り、保険者側が「疾病等の内部要因による事故」であることを抗弁として主張立証すべきという実務上の枠組みを確定させた。
事件番号: 平成23(受)1043 / 裁判年月日: 平成25年4月16日 / 結論: 破棄差戻
吐物の誤嚥は,傷害保険普通保険約款において保険金の支払事由として定められた「外来の事故」に該当する。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成17(受)2058 / 裁判年月日: 平成18年6月6日 / 結論: その他
「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする自動車保険契約の約款に基づき,車両の表面に傷が付けられたことが保険事故に該当するとして,保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わない。