建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。
建物の設計者,施工者又は工事監理者が,建築された建物の瑕疵により生命,身体又は財産を侵害された者に対し不法行為責任を負う場合
民法709条
判旨
建物の設計・施工者等は、建物としての基本的な安全性が欠けることのないよう配慮すべき注意義務を負い、これを怠ったために居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合は、特段の事情がない限り不法行為責任を負う。
問題の所在(論点)
建物の設計・施工者等は、契約関係のない建物の譲受人(居住者等)に対して、建物に瑕疵があることにつき不法行為責任を負うか。不法行為成立の要件として、建物の基礎・構造に関わるような重大な瑕疵(強度の違法性)が必要か。
規範
建物の設計者、施工者及び工事監理者は、契約関係にない居住者等(利用者、隣人、通行人等)に対しても、建物に「建物としての基本的な安全性」を欠くことがないように配慮すべき注意義務を負う。この義務を怠ったために当該安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負う。ただし、被害者が瑕疵の存在を知りながら買い受けたなどの特段の事情がある場合はこの限りではない。
重要事実
建築主Aから9階建て共同住宅を買い受けたXらが、建物に多数のひび割れや鉄筋の耐力不足、スラブの構造上の瑕疵があるとして、設計・工事監理を行ったY1および施工を行ったY2に対し、不法行為に基づき損害賠償を求めた。原審は、不法行為が成立するのは「建物の存在自体が社会的に危険な状態である場合」等の強度の違法性がある場合に限られるとして請求を棄却したが、Xらが上告した。
あてはめ
建物は多様な者が利用し、周辺環境にも影響を及ぼすため、居住者等の安全を確保すべき基本的な安全性を備える必要がある。原審は構造耐力上の安全性や基礎・構造部分に限定して判断したが、例えばバルコニーの手すりの不備で転落する恐れがある場合も、生命・身体を危険にさらす以上「基本的な安全性」を損なう瑕疵に該当し得る。したがって、違法性が強度である場合に限って不法行為責任を認めるとした原審の基準は失当である。
結論
建物の基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には不法行為責任が成立する。本件建物にそのような瑕疵があるか、損害が発生しているかを審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
契約関係のない転得者から設計・施工者への追及を認めた重要判例。答案では「建物としての基本的な安全性」をキーワードに、瑕疵の具体的内容(生命・身体・財産への危険性)を評価してあてはめる。後の平成23年判決により、この安全性は「建物の存立を損なう」事態のみならず、放置すればいずれ破壊される危険性等も含むと解されている。
事件番号: 平成12(受)1711 / 裁判年月日: 平成15年11月14日 / 結論: 棄却
1 建築士は,その業務を行うに当たり,建築物を購入しようとする者に対する関係において,建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2の各規定等による規制の潜脱を容易にする行為等,その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があり,故意又は過失によりこれに…