信用保証協会を債権者とし被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に,信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれない。
信用保証協会を債権者とし被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に,信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれるか
民法398条の2第2項,民法446条,民法643条,信用保証協会法20条1項
判旨
根抵当権の被担保債権の範囲を「保証委託取引」と定めた場合、特段の事情がない限り、債務者が第三者の保証委託債務を連帯保証したことによる保証債務は、当該根抵当権の被担保債権には含まれない。
問題の所在(論点)
根抵当権の設定契約において、被担保債権の範囲を「保証委託取引」と定めた場合、債務者が第三者の債務を連帯保証したことにより生じる「保証債務」がその範囲に含まれるか。
規範
民法398条の2第2項が被担保債権の範囲を「一定の種類の取引」に限定すべきとした趣旨は、第三者に対する関係でも具体的範囲が明確である必要がある点にある。したがって、「保証委託取引」とは、通常、債務者自身が主債務者となる保証を依頼し、それに基づき生じる求償権等を指し、債務者が第三者の債務を保証する「保証債務」は、当該取引とは別個の性質を有するものとして、被担保債権の範囲には含まれないと解すべきである。
重要事実
信用保証協会(被上告人)は、Aの銀行借入につき信用保証を行い、CがAの保証委託債務を連帯保証した(本件保証債権)。その後、Cは自身が主債務者として借り入れる際に、被上告人との間で被担保債権の範囲を「保証委託取引による一切の債権」とする根抵当権を設定した。Cが自己の借入金を完済した後、建物を譲り受けた上告人が元本確定請求を行い、本件保証債権が根抵当権の範囲に含まれるか否かが争点となった。
事件番号: 昭和38(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
不動産所有権を取得したが本登記手続を経ない仮登記権利者は、右不動産上の抵当権者に対し被担保債務が弁済されたことを理由に当該抵当権設定登記の抹消登記手続を請求し得ない。
あてはめ
本件根抵当権の範囲は「保証委託取引」に限定されている。Cが負う本件保証債務は、Aという第三者の保証委託契約に基づく債務をCが保証したものであり、C自身が被上告人から保証を受ける「保証委託取引」そのものとは無関係である。また、第三者に対する関係でも範囲は明確であるべきところ、保証委託取引という表示が、信用保証協会の業務に関する全ての取引(付随業務たる保証を含む)を指すと解することは、取引の予測可能性を害するため認められない。したがって、本件保証債権は「保証委託取引」によって生じた債権とはいえない。
結論
本件保証債権は本件根抵当権の被担保債権に含まれない。よって、他に被担保債権が存在しない以上、上告人の抹消登記請求は認められる。
実務上の射程
根抵当権の被担保債権の範囲の解釈に関する重要判例。文言が「保証委託取引」であれば、債務者自身の求償権のみを指し、債務者が他人のために負う保証債務をカバーするには「保証債務」等の明示が必要である。答案では、398条の2第2項の「一定の種類の取引」の明確性を論ずる際の規範として活用する。
事件番号: 昭和46(オ)908 / 裁判年月日: 昭和47年12月19日 / 結論: 破棄差戻
根抵当権設定の交渉過程において、当初は債権者が債務者を再興させるために一定の条件が成就したときに行なうべき再建融資のみを被担保債権とすることが予定されていたが、その後右条件成就が未定の間に、債権者が債務者の支払手形を決済させるためのつなぎ融資を行ない、根抵当権設定者において後者を被担保債権に加えることに同意する等判示の…
事件番号: 平成4(オ)1128 / 裁判年月日: 平成7年11月10日 / 結論: 棄却
譲渡担保権者は、担保権を実行して確定的に抵当不動産の所有権を取得しない限り、民法三七八条所定の滌除権者たる第三取得者に当たらない。
事件番号: 昭和42(オ)373 / 裁判年月日: 昭和43年9月27日 / 結論: 棄却
甲乙間の織物および織物加工品の商取引ならびに手形取引契約に基づいて生ずる債権ならびに乙丙間の織物の取引に関し生じたもので甲において丙からその譲受が予想される債権をも担保することを目的として、甲乙間でされた根抵当権設定契約は、有効である。
事件番号: 平成5(オ)1788 / 裁判年月日: 平成8年7月12日 / 結論: 破棄差戻
物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。