1 第1審の裁判官が,判決宣告期日として指定告知した日時に,検察官の出席がない法廷で,判決を宣告した上,被告人の退廷を許し,被告人が法廷外に出た後,勾留場所に戻った被告人を呼び戻して検察官出席の上再度行った判決の宣告は,法的な効果を有しない。 2 検察官の出席がないまま行われた第1審の判決宣告手続には,判決に影響を及ぼすことが明らかな違法がある。
1 検察官の出席がないまま判決を宣告した後退廷した被告人を呼び戻して検察官出席の上再度行った判決の宣告が法的な効果を有しないとされた事例 2 検察官の出席がないまま行われた第1審の判決宣告手続の違法と判決に対する影響の有無
(1,2につき)刑訴法282条2項,刑訴法342条,刑訴規則35条 (2につき)刑訴法379条
判旨
検察官の欠席した状態でなされた判決宣告は、刑事訴訟法282条2項に違反し、判決に影響を及ぼすことが明らかであるが、被告人に実質的な利益侵害がなく、事実上検察官も判決を了知している等の事情があれば、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
問題の所在(論点)
検察官の欠席する法廷でなされた判決宣告の効力、およびその後の再度の宣告による瑕疵治癒の可否、ならびに当該違法が刑訴法411条1号の破棄事由(著しく正義に反するか)に該当するか。
規範
公判期日には検察官の出席を要する(刑訴法282条2項)。判決宣告は公判期日の手続であり、被告人が退廷した時点で当該期日は終了するから、その後の再度の宣告は法的効果を有しない事実上の措置にすぎない。検察官不在での宣告は「判決に影響を及ぼすことが明らか」な法令違反(同379条、411条1号)にあたるが、破棄自判の要否は「著しく正義に反するか」の観点から、被告人の利益侵害の有無や検察官の了知状況等の具体的事実を総合して判断する。
重要事実
第1審の判決宣告期日において、裁判官が検察官の欠席に気づかず、被告人及び弁護人のみの在廷下で判決を宣告し、結審した。被告人は退廷して拘置所に戻ったが、書記官が欠席に気づき、約30分後に被告人を呼び戻して検察官出席の下で再度同一内容の判決を宣告した。被告人は控訴したが、検察官は控訴せず、原審(控訴審)は宣告手続の違法を認めつつも判決に影響はないとして控訴を棄却した。
あてはめ
第1回目の宣告時、検察官が不在であったことは刑訴法282条2項に違反する。被告人が一度退廷した以上、期日は終了しており、同日の再宣告は法的効果を生じない。したがって、第1審判決の手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反がある。しかし、(1)再宣告により宣告内容は正確に伝達されていること、(2)被告人に実質的な不利益が生じていないこと、(3)検察官も事実上直ちに判決内容を了知していることから、本件の違法は、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
第1審の判決宣告手続は違法であり、原審の法令解釈には誤りがあるが、著しく正義に反するとはいえないため、上告を棄却する。
実務上の射程
検察官の出席を欠く公判手続が重大な訴訟手続の法令違反であることを明示した。答案上は、手続違法が認められる場合でも、被告人への実質的不利益の有無や訴訟経済の観点から、相対的控訴理由(379条)や上告受理の判断枠組み(411条1号)において「著しく正義に反するか」を慎重に検討する際の指標となる。
事件番号: 平成25(あ)508 / 裁判年月日: 平成25年11月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】控訴審が被告人の控訴に基づき第1審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は刑訴法495条2項2号により当然に全日本刑に通算されるため、刑法21条による算入の言渡しをすべきではない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反等の罪で起訴され、第1審で懲役3年及び罰金50万円の判決を受けた。…
事件番号: 平成25(あ)507 / 裁判年月日: 平成25年11月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】控訴審が被告人の控訴に基づき第一審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は刑訴法495条2項2号により当然に全日本刑に通算されるため、裁判所に裁量的算入の余地はない。したがって、刑法21条を適用して未決勾留日数の一部を算入する旨を判決で言い渡すことは、法令適用を誤った判例違反である。 第1 …
事件番号: 平成17(あ)202 / 裁判年月日: 平成17年7月19日 / 結論: 棄却
医師が,治療の目的で救急患者の尿を採取して薬物検査をしたところ,覚せい剤反応があったため,その旨警察官に通報し,これを受けて警察官が上記尿を押収したなどの事実関係の下では(判文参照),警察官が上記尿を入手した過程に違法はない。