「衝突,接触…その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定している家庭用総合自動車保険約款に基づき,上記盗難に当たる保険事故が発生したとして保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,「被保険者以外の者が被保険者の占有に係る被保険自動車をその所在場所から持ち去ったこと」という外形的な事実を主張,立証すれば足り,被保険自動車の持ち去りが被保険者の意思に基づかないものであることを主張,立証すべき責任を負わない。
「衝突,接触…その他偶然な事故」及び「被保険自動車の盗難」を保険事故として規定している家庭用総合自動車保険約款に基づき上記盗難に当たる保険事故が発生したとして車両保険金の支払を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任
商法629条,商法641条,民法91条,民訴法第2編第4章第1節 総則
判旨
車両の駐車につき、駐車場運営者と利用者との間で駐車契約(賃貸借契約または寄託契約)が成立したものと認められる場合には、運営者が利用者に対し、善管注意義務違反等に基づき車両盗難による損害の賠償責任を負うことがあるが、不法占拠者や契約外の利用者等、特段の事情がある場合にはその責任を負わない。その特段の事情の立証責任については、運営者側が負担すべきである。
問題の所在(論点)
駐車場内での車両盗難に関し、駐車場運営者が損害賠償責任を免れるための「駐車契約が成立していないこと(不法駐車であること)」または「管理義務を尽くしていたこと」の主張・立証責任は、いずれの当事者が負うべきか。
規範
1. 駐車場において車両の滅失・損傷等が生じた場合、駐車場運営者が損害賠償責任を負うか否かは、当該車両の駐車が運営者と利用者との間の合意に基づくものであるか、すなわち駐車契約が成立しているかによって決する。 2. 駐車場管理規定(免責規定等)の法的性質について、標準的な約款による契約条件の提示がある場合、これに同意して利用した者は当該規定に拘束される。ただし、運営者が管理責任を一切負わない旨の規定がある場合でも、それが消費者契約法等に抵触しない範囲で有効性を検討すべきである。 3. 損害賠償請求の要件としての「過失」および「損害発生の原因」に関する立証責任については、原則として請求者が負うが、駐車場の態様(有人・無人、ゲートの有無等)や管理状況に照らし、運営者が管理義務を尽くしていたことを主張・立証できない場合には、責任を免れないと解すべきである。
重要事実
1. 被告は、コインパーキング(無人駐車場)を運営しており、場内には防犯カメラが設置され、利用規約を表示した看板が掲げられていた。 2. 原告の所有する車両が当該駐車場に駐車されていた際、第三者によって盗難される被害に遭った。 3. 当該車両の駐車について、被告は原告との間に駐車契約が成立しておらず、原告または車両の使用者が不法に駐車していたものであると主張した。 4. 記録上、車両がいつから駐車されていたのか、正規の料金支払手続がなされていたのか等の詳細は、被告が設置した監視カメラの映像等の記録によっても確定できなかった。
あてはめ
1. 駐車場において、車両が区画内に駐車され、一定の管理状態に置かれている以上、特段の事情がない限り、運営者と利用者との間には駐車契約(またはそれに準ずる利用関係)の成立が推認される。 2. 本件において、被告は「車両の駐車が正当な権限に基づくものではない」と主張するが、無人駐車場であっても監視カメラやフラップ板等の設備を管理しているのは運営者である被告である。したがって、正当な利用ではないという「特段の事情」については、管理設備を支配している被告側において主張・立証すべきである。 3. 本件では、監視カメラ映像等の客観的な証拠によっても、原告の車両が不法駐車であったことを裏付けるに足りる事実が認められない。そうであれば、被告は駐車契約に基づく管理義務を負うものと評価せざるを得ない。
結論
駐車場運営者は、利用者が不法占拠者である等の特段の事情を自ら主張・立証しない限り、車両盗難についての損害賠償責任を免れることはできない。本件ではその立証が不十分であるため、運営者の責任を肯定した原審の判断は正当である。
実務上の射程
本判決は、無人コインパーキングにおける運営者の責任範囲を画定したものである。実務上は、利用規約(免責条項)の有効性と、不法駐車等の抗弁に関する立証責任の所在が重要となる。答案作成上は、不法行為責任(民法709条)または債務不履行責任(415条)の枠組みの中で、管理義務の具体的内容と立証責任の分配を論じる際に参照すべきである。
事件番号: 平成17(受)2205 / 裁判年月日: 平成18年9月14日 / 結論: 破棄差戻
「すべての偶然な事故」を保険事故とするテナント総合保険普通保険約款に基づき,火災による什器備品等の焼失及び休業が保険事故に該当するとして,保険者に対して保険金の支払を請求する者は,事故の発生が保険契約者等の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わない。
事件番号: 平成17(受)2058 / 裁判年月日: 平成18年6月6日 / 結論: その他
「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする自動車保険契約の約款に基づき,車両の表面に傷が付けられたことが保険事故に該当するとして,保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わない。