1 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器(判文参照)を使用する意図のもとにこれを身体に装着してパチスロ機で遊戯する行為は,同機器がパチスロ機に直接には不正の工作ないし影響を与えないものであっても,窃盗罪の実行行為に当たる。 2 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器(判文参照)を使用する意図のもとにこれを身体に装着してパチスロ機で遊戯し取得したメダルについては,それが同機器の操作の結果取得されたものであるか否かを問わず,そのすべてについて窃盗罪が成立する。
1 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器を身体に装着してパチスロ機で遊戯する行為の窃盗罪該当性 2 専らメダルの不正取得を目的として体感器と称する電子機器を身体に装着してパチスロ機で遊戯し取得したメダルについて窃盗罪が成立する範囲
(1,2につき)刑法235条
判旨
パチスロ機の電子回路に体感器を装着してメダルを取得する行為と、建造物侵入罪(刑法130条前段)の成否
問題の所在(論点)
一般に開放されたパチンコ店に、客の体裁で立ち入った場合であっても、不正な器具(体感器)を使用して利益を得る目的がある場合、刑法130条前段の「侵入」に該当するか。
規範
管理権者があらかじめ立ち入りを拒否する意思を明確に表示している場合、または立ち入りの態様が管理権者の意思に反すると認められる場合には、建造物侵入罪における「侵入」にあたる。一般客として立ち入る外形を呈していても、専ら不法な目的(メダル等の不正取得)を有し、管理権者がその目的を知れば立ち入りを許さないであろう場合には、管理権者の合理的な意思に反するものと解される。
重要事実
被告人は、パチスロ機の電子回路の有する周期性を利用してメダルを狙い打つため、体感器(特定のタイミングを感知する器具)を身体に装着した。被告人は、専らメダルを不正に取得する目的でパチンコ店に入店し、実際にこれを用いて約1500個のメダルを取得した。当該パチンコ店側は、このような不正な方法による遊技およびその目的での入店を禁止していた。
事件番号: 平成21(あ)328 / 裁判年月日: 平成21年6月29日 / 結論: 棄却
1 パチスロ店内で,パチスロ機に針金を差し込んで誤動作させるなどの方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が,上記犯行を隠ぺいする目的をもって,その隣のパチスロ機において,自ら通常の方法により遊戯していた場合,この通常の遊戯方法により取得したメダルについては,窃盗罪は成立しない。 2 パチスロ機の下皿内に窃取した…
あてはめ
被告人の入店目的は、専ら体感器を使用してメダルを不正に取得することにあった。パチンコ店側は、不正な方法によるメダル取得を目的とする者の入店を許さない意思を明確に有していたといえる。したがって、被告人が一般客を装って入店したとしても、その実態は管理権者の意思に反する立ち入りであり、管理権者の有する看守上の平穏を害するものと評価される。よって、本件立ち入りは「侵入」に該当すると解される。
結論
被告人の行為は、建造物侵入罪の構成要件に該当し、同罪が成立するとした原判断は正当である。
実務上の射程
本判決(最三小決平成19年2月8日)は、管理権者が立ち入りを禁止している不法な目的(体感器使用等)を隠して入店する行為について、住居侵入・建造物侵入罪の成立を肯定した重要な先例である。
事件番号: 平成18(あ)2664 / 裁判年月日: 平成19年7月2日 / 結論: 棄却
1 現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合,その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても,建造物侵入罪が成立する。 2 現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮するためのビデオカメラを設置した現金自動預払機の隣…
事件番号: 平成20(あ)835 / 裁判年月日: 平成21年7月13日 / 結論: 棄却
警察署庁舎建物及び中庭への外部からの交通を制限し,みだりに立入りすることを禁止するために設置された高さ約2.4mの本件塀は,建造物侵入罪の客体に当たり,中庭に駐車された捜査車両を確認する目的で本件塀の上部に上がった行為は,建造物侵入罪を構成する。