1 建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは,当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきである。 2 住居の玄関ドアとして,外壁と接続し,外界とのしゃ断,防犯,防風,防音等の重要な役割を果たしている物(判文参照)は,適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外しが可能であるとしても,建造物損壊罪の客体に当たる。
1 建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かの判断基準 2 住居の玄関ドアが建造物損壊罪の客体に当たるとされた事例
(1,2につき)刑法260条前段
判旨
建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度に加え、当該物の建造物における機能上の重要性を総合考慮して決すべきである。
問題の所在(論点)
住居の玄関ドアのように、容易に取り外しが可能な附随物が、刑法260条の「建造物」に含まれるか。
規範
建造物に取り付けられた物が、刑法260条の「建造物」に該当するか否かは、①当該物と建造物との接合の程度に加え、②当該物の建造物における機能上の重要性を総合考慮して判断する。なお、損壊せずに取り外しが可能であることは、直ちに同罪の成立を否定するものではない。
重要事実
被告人は、5階建て市営住宅1階の居室出入口に設置された金属製ドア(高さ約200cm、幅約87cm)を金属バットで叩いて凹損させた。当該ドアは、外枠に3個の蝶番で接合され、構造上外壁と接続して一体的な外観を呈していたが、適切な工具を使用すれば損壊せずに取り外すことが可能な状態であった。
あてはめ
本件ドアは、外枠を介して建物外壁と接続し、一体的な外観を呈しており接合の程度が認められる(要素①)。また、住居の玄関ドアとして、外界との遮断、防犯、防風、防音といった、住居の機能維持における極めて重要な役割を果たしている(要素②)。したがって、工具により損壊せず取り外し可能であるという点(物理的固着性の弱さ)を考慮しても、なお建造物の一部を構成すると評価できる。
結論
本件ドアは「建造物」に該当し、これを損壊する行為には建造物損壊罪(刑法260条)が成立する。
実務上の射程
建造物損壊罪と器物損壊罪の限界に関する重要判例である。物理的固着性(取り外しの困難性)を重視する従来の一部見解に対し、機能的重要性を加味する総合考慮枠組みを明示した。答案では、本件のような玄関ドアや、窓ガラス、シャッター等の「建物の機能を支える部品」の損壊について、本規範を用いるべきである。
事件番号: 平成16(あ)2154 / 裁判年月日: 平成18年1月17日 / 結論: 棄却
公園内の公衆便所の白色外壁に,ラッカースプレーで赤色及び黒色のペンキを吹き付け,「反戦」,「戦争反対」及び「スペクタクル社会」と大書し,その建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせた行為は,刑法260条前段にいう建造物の「損壊」に当たる。