判旨
商標権の譲渡や使用許諾に関する和解が成立していても、当該商標登録が一般消費者に商品の出所を混同させるおそれがある場合には、公序良俗に反し、商標法4条1項7号により無効と解されるべきである。また、混同を生じさせる具体的な使用態様を前提とした和解条項は、同号の適用を排除する根拠とはならない。
問題の所在(論点)
商標権者と先行使用者との間で商標の使用を認める和解が成立している場合、当該和解に基づく商標登録が商標法4条1項7号にいう「公序良俗を害するおそれがある商標」に該当するか。特に、一般消費者の利益保護(出所混同の防止)の観点から、当事者間の合意が同号の適用を左右するか。
規範
商標法4条1項7号(公序良俗違反)に該当するか否かは、登録商標自体の構成のみならず、その登録に至る経緯、出願人の主観的意図、及び登録により生じる社会的影響(一般消費者の利益保護)を総合的に考慮して判断する。特に、著名な他人の商標と類似し、出所混同を惹起させる目的でなされた登録や、和解等の合意があったとしても、客観的に出所混同を生じさせ消費者の利益を著しく害する場合には、同号に該当し、その登録は無効となる。
重要事実
菓子「コンフェクト」を製造販売し、同標章につき著名性を獲得していた被上告人(原告)と、類似の商標「コンフェクト」を登録した上告人(被告)との間で、過去に和解が成立していた。和解の内容は、被上告人が上告人に対し「コンフェクト」の使用を許諾し、その対価を支払うというものであった。しかし、その後上告人が本件商標を登録した際、被上告人が商標法4条1項7号等を理由に登録無効審判を請求した。上告人は、和解により使用が認められている以上、同号には該当しないと主張した。
あてはめ
和解の内容は、上告人が「コンフェクト」部分を被上告人の標章より小さく表示する等の具体的態様を前提に使用を認めたものに過ぎない。しかし、本件登録商標自体は、被上告人の著名な標章と紛らわしい構成を有しており、登録を維持すれば、和解の当事者以外の一般消費者が商品の出所を誤認混同する具体的危険がある。商標法が保護するのは当事者の利害だけでなく、一般消費者の利益及び適正な取引秩序である。したがって、私人間で解決金が支払われたという事情や、限定的な使用許諾の合意があるという事実は、客観的に存在する出所混同の危険性を解消するものではなく、公序良俗違反の判断を妨げない。
結論
本件商標登録は商標法4条1項7号に該当し、無効とされるべきである。当事者間の和解条項は、一般消費者の混同防止という公益的要請を凌駕するものではない。
実務上の射程
本判決は、商標法4条1項7号が「公益的規定」であることを強調しており、当事者間で使用合意(コンセント)があっても、客観的に混同が生じる場合には登録が否定される可能性があることを示している。実務上、和解による解決を図る際も、一般消費者の混同を招かないような構成の変更や周知措置が不可欠であることを示唆する。
事件番号: 昭和38(オ)781 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
他人の商号の使用が、一定地域内に限られている場合には、その商号が当該地域内において「広ク認識セラルル」ものであるかどうかを判断すれば足りる
事件番号: 平成7(オ)637 / 裁判年月日: 平成10年9月10日
【結論(判旨の要点)】著名表示の冒用行為は、商品等の混同が生じるか否かにかかわらず、その著名性による顧客吸引力を不当に利用し、自己の営業の出所を表示するものと認識させるおそれがある限り、不正競争防止法上禁止される。 第1 事案の概要:世界的有名ブランド「CHANEL」の商標・商号を有する原告が、被告による「スナックシャ…
事件番号: 平成12(行ヒ)172 / 裁判年月日: 平成13年7月6日
【結論(判旨の要点)】商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」とは、当該商標が著名商標と同一又は類似である場合に限られず、商標の構成、著名度、商品の関連性等を総合考慮して、出所について混同を生ずるおそれがある場合を広く含む。 第1 事案の概要:出願商標(本件商標)は「PA…