判旨
公正証書遺言が作成された後に、遺言者が自筆で追記等の修正を行った場合であっても、それが遺言者の真意に基づくものであり、遺言の同一性を損なわない範囲の修正であれば、遺言全体の効力は否定されない。
問題の所在(論点)
公正証書遺言に対して、後に遺言者が自筆で加筆修正を行った場合、その修正が遺言全体の効力にどのような影響を及ぼすか。また、方式の不備が遺言を無効にするか。
規範
遺言書の一部に後日自筆による加筆や修正がなされた場合であっても、その修正が遺言者の真意に基づき、かつ元の遺言の趣旨を補足・明確化するにとどまるものであれば、遺言の有効性に影響を及ぼさない。自筆証書遺言の方式に関する民法968条等の規定は、遺言者の真意を確保するためのものであるから、方式に一部欠缺があっても直ちに無効とはせず、遺言全体の趣旨や作成の経緯を総合考慮して判断すべきである。
重要事実
本件では、当初公正証書の形式で遺言が作成されたが、その後、遺言者本人がその生存中に自ら文字を修正・加筆した。この加筆修正は、遺言者の意図をより正確に反映させるために行われたものであり、内容において当初の公正証書遺言と全面的に矛盾するものではなかった。また、修正作業は遺言者の意思に基づき、その指示に従って進められたものであった。
あてはめ
本件の修正は、遺言者の生存中に本人の真意に基づいてなされたものである。判決文によれば、修正部分は当初の遺言の内容を全面的に書き換えるものではなく、遺言者の最終的な意思を確定させるための補足的な性質を有していた。このような事情の下では、一部に自筆による修正が混在していても、公正証書遺言としての実質的な正確性と遺言者の真意の確認は妨げられないと評価できる。したがって、方式の厳格性を理由に直ちに無効とすることは相当ではない。
結論
本件遺言の加筆修正は遺言者の真意に基づくものであり、遺言全体として有効である。原審の判断を維持し、上告を棄却する。
事件番号: 平成3(行ツ)98 / 裁判年月日: 平成5年3月30日
【結論(判旨の要点)】特許法上の新規性等における「発明の同一性」の判断において、出願書類の要旨変更に当たらない範囲内での補正により技術的構成が具体化された場合であっても、それが当業者が当然に採用する程度の周知・慣用技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものでない限り、発明の同一性は失われない。 第1 事案の概要:本件発…
実務上の射程
自筆証書遺言や公正証書遺言の方式不備が争点となる事案において、方式の厳格貫徹よりも「遺言者の真意の保護」を優先させる際の根拠として活用できる。特に、一部の加筆修正が遺言全体を無効にするかどうかの判断において、修正の程度と真意の合致を検討する際の指標となる。
事件番号: 平成27(受)118 / 裁判年月日: 平成28年6月3日 / 結論: 破棄差戻
いわゆる花押を書くことは,民法968条1項の押印の要件を満たさない。
事件番号: 昭和51(オ)978 / 裁判年月日: 昭和52年4月19日 / 結論: 棄却
遺言者が、遺言書のうち日附以外の全文を記載して署名押印し、その八日後に当日の日附を記載して右遺言書を完成させたときは、特段の事情のない限り、右日附を記載した日に作成された自筆証書遺言として、有効である。
事件番号: 平成4(オ)364 / 裁判年月日: 平成5年10月19日
【結論(判旨の要点)】特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について、出願過程等において特許権者が構成を制限したなどの特段の事情がない限り、明細書等の記載に基づいて客観的に画定されるべきである。 第1 事案の概要:特許権者(原告)は、インゴットの取付け位置に関する発明について特許権を有していた。被告が製造販売…