判旨
プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレイム)の技術的範囲は、製造方法に限定されるのではなく、その方法により製造される「物」と同一の構成を有する物すべてに及ぶと解すべきである。
問題の所在(論点)
物の発明の特許請求の範囲において、その製造方法が記載されている場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)における、発明の技術的範囲の確定手法が問題となる。
規範
特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる(特許法70条1項)。物の発明につき製造方法が記載されている場合であっても、特許請求の範囲にはその製造方法により製造される「物」そのものが記載されていると解される。したがって、その技術的範囲は、当該製造方法に限定されることなく、当該方法により得られる物と構造・特性等が同一である物すべてに及ぶ。
重要事実
本件発明は、特定の製造方法(方法1ないし3)によって製造された「ポリフェノール含有エキスの分画物」に関するものである。被告製品は、原告の特許請求の範囲に記載された製造方法とは異なる方法で製造されていたが、得られた物の成分や特性において原告の特許発明に係る物と同一であるかどうかが争点となった。
あてはめ
特許法が物の発明と方法の発明を区別していることに鑑みれば、物の発明として特許が与えられた以上、その効力は製造方法を問わず「物」そのものに及ぶのが原則である。製造方法が記載されているのは、単に物の構成を直接的に特定することが困難なためであって、発明の対象を特定の製造方法により得られる物に限定する趣旨ではない。したがって、被告製品が特許請求の範囲に記載された製造方法と異なる方法で作られていても、得られた物が特許発明の物と同一であれば、技術的範囲に属すると判断される。
結論
PBPクレイムの技術的範囲は、特許請求の範囲に記載された製造方法によって得られる物と同一の物であれば、製造方法を問わずその全てに及ぶ(物同一説)。
事件番号: 平成24(受)2658 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その発明の要旨は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として認定される。 (補足意見及び意見がある。)
実務上の射程
本判決は侵害訴訟における技術的範囲の解釈指針(物同一説)を示したものである。答案上は、まず70条1項を提示した上で、PBPクレイムであっても発明の対象は「物」であるという本質を論じる。なお、明確性要件(36条6項2号)との関係で「不可能・困難事情」が必要とされる点も併せて言及することが実務上重要である。
事件番号: 昭和40(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和45年6月16日
【結論(判旨の要点)】特許権侵害の成否において、特許発明の目的を達成し得ない構成を採用した製品は、その発明の技術的範囲に属さないと解される。 第1 事案の概要:上告人は「研磨布の製造方法」に関する特許権を有していた。被上告人が製造・販売する製品(以下「本件製品」)の製造工程が、当該特許の構成要件を充足するかが争点となっ…
事件番号: 平成24(受)1204 / 裁判年月日: 平成27年6月5日 / 結論: 破棄差戻
1 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているいわゆるプロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定される。 2 物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載さ…
事件番号: 平成4(オ)364 / 裁判年月日: 平成5年10月19日
【結論(判旨の要点)】特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について、出願過程等において特許権者が構成を制限したなどの特段の事情がない限り、明細書等の記載に基づいて客観的に画定されるべきである。 第1 事案の概要:特許権者(原告)は、インゴットの取付け位置に関する発明について特許権を有していた。被告が製造販売…
事件番号: 平成3(行ツ)98 / 裁判年月日: 平成5年3月30日
【結論(判旨の要点)】特許法上の新規性等における「発明の同一性」の判断において、出願書類の要旨変更に当たらない範囲内での補正により技術的構成が具体化された場合であっても、それが当業者が当然に採用する程度の周知・慣用技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものでない限り、発明の同一性は失われない。 第1 事案の概要:本件発…