判旨
特許法上の特許出願における明細書又は図面の補正は、願書に添付した明細書又は図面の要旨を変更しないものである限り、拒絶査定の謄本の送達があるまでは、いつでもこれをすることができる。
問題の所在(論点)
特許出願後の明細書又は図面の補正について、特許法上の制限(時期的な限界および内容的な限界)はどのように解釈されるべきか。特に「要旨の変更」に当たらない補正が許容される終期が問題となる。
規範
特許法(昭和34年法律第121号。改正前を含む)の規定によれば、特許出願の際に出願人が開示した発明の内容を適正に画定し、第三者に不測の不利益を与えない範囲において、手続の円滑な進行を図る必要がある。したがって、特許出願に係る明細書又は図面の補正は、その「要旨を変更しない」範囲内であれば、拒絶査定の謄本が送達されるまでの間は、特段の制限がない限りいつでも行うことが可能であると解すべきである。
重要事実
本件は、特許出願に係る明細書及び図面の補正の適否が争われた事案である。出願人は、審査段階において明細書等の補正を試みたが、特許庁側はその時期や内容等の観点から不適法であるとして争った。具体的には、拒絶査定に至るまでの過程において、どの時点まで補正が許容されるか、またその内容的な限界(要旨変更の有無)が問題となった。
あてはめ
本件において、出願人が行った補正は、願書に当初添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、いわゆる「要旨の変更」には該当しないと判断される。また、当該補正が行われた時点は、本件特許出願に対する拒絶査定の謄本が送達される前であった。特許法の規定(旧法を含む)に照らせば、拒絶査定の謄本送達前かつ要旨変更に当たらない補正は適法な手続として認められるべきである。
結論
明細書又は図面の補正は、要旨を変更しない限り、拒絶査定の謄本送達前であればいつでも行うことができる。したがって、本件補正を不当とした原審の判断には法令の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
本判決は、補正の時期と内容の限界について、当時の特許法の解釈指針を示したものである。現行特許法17条の2等において補正ができる時期はより細かく限定されているが、「要旨変更(現行法では『新規事項の追加』)の禁止」という根本的な枠組みや、査定前の手続的保障の考え方は、今日の答案作成における補正の適法性判断の基礎となっている。
事件番号: 昭和63(行ツ)86 / 裁判年月日: 平成3年9月17日 / 結論: 棄却
出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後にする補正が特許法六四条一項ただし書の要件を具備するか否かは、当該補正の時点における明細書又は図面を基準として判断されるべきである。
事件番号: 昭和54(行ツ)134 / 裁判年月日: 昭和59年3月13日
【結論(判旨の要点)】審決取消訴訟における特許無効の存否に関する裁判所の審理判断は、審判手続において当事者が主張し、かつ審理判断された審絶の理由に照らし、審決の適否を判断すべきものである。審決の結論を維持するために審理対象外の新たな証拠や理由に基づき判断することは許されない。 第1 事案の概要:特許庁が、本件発明(シア…
事件番号: 平成3(行ツ)98 / 裁判年月日: 平成5年3月30日
【結論(判旨の要点)】特許法上の新規性等における「発明の同一性」の判断において、出願書類の要旨変更に当たらない範囲内での補正により技術的構成が具体化された場合であっても、それが当業者が当然に採用する程度の周知・慣用技術の付加にすぎず、新たな効果を奏するものでない限り、発明の同一性は失われない。 第1 事案の概要:本件発…
事件番号: 昭和49(行ツ)2 / 裁判年月日: 昭和53年3月28日
【結論(判旨の要点)】特許出願の分割における「原出願の時にしたものとみなされる」効果は、分割出願に係る発明の全技術的事項が原出願当初の明細書に当業者が理解・実施可能な程度に記載されている場合に限り認められる。 第1 事案の概要:上告人は、原出願から分割して新たな特許出願を行ったが、その分割出願が原出願の時にしたものとみ…