判旨
国立公園内の工作物撤去命令に対し、同工作物の存在によって不利益を受ける隣接住民等が、当該命令を維持することを求める原告適格を有するか否かが争われた。裁判所は、行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」に当たらないと判断した。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」の意義、及び自然公園法に基づく撤去命令によって隣接住民が享受する利益が、同法によって保護される個別的利益に当たるか否か。
規範
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」とは、処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。当該利益が法律上保護された利益といえるかは、当該処分の根拠法規が、公益を保護するとともに個人の個別的利益をも保護する趣旨を含むかによって判断される。単なる事実上の利益や、公益の保護の結果として生ずる反射的利益はこれに含まれない。
重要事実
自然公園法に基づき、国立公園内の景観を維持するために工作物の撤去命令が発せられた。これに対し、当該工作物の撤去によって良好な景観や環境を享受し得ると主張する付近住民が、当該命令の効力を争う、あるいはその執行を求める立場から訴訟に関与しようとした。なお、入力されたテキストが断片的であるため、具体的な物件名や処分の詳細は「判決文からは不明」であるが、国立公園等の自然保護に関連する事案であると解される。
あてはめ
自然公園法が定める工作物の新築等の制限や撤去命令の規定は、すぐれて優れた自然の風景地を保護し、もって国民の保健、休養及び教化に資することを目的とするものである。これらの規定は、広く一般公益を保護することを目的とするものであり、周辺住民が享受する景観や良好な自然環境といった利益は、同法が保護しようとする公益の実現によりもたらされる「反射的利益」にすぎない。したがって、付近住民が受ける不利益は、法律上保護された利益の侵害とは認められない。
結論
本件付近住民は、当該撤去命令の維持や取消しを争うにつき行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」に該当しないため、原告適格を欠き、訴えは却下されるべきである。
事件番号: 昭和47(オ)659 / 裁判年月日: 昭和49年6月28日
【結論(判旨の要点)】公道上に設置された電柱の敷地利用権を競売手続の買受人が取得した場合において、電柱の移設が技術的に困難であり、かつ多額の費用を要する一方で、所有者が受ける不利益が僅少であるときは、移設請求は権利の濫用に当たる。 第1 事案の概要:本件は、競売により土地を取得した所有者が、当該土地の公道上に設置されて…
実務上の射程
環境訴訟における原告適格の判断枠組みを示す典型例である。根拠法規が「一般公益」のみを目的とするか、それとも「個別的利益」をも保護する趣旨かという二分論を用いる。特に自然景観のような広範な利益については、個別的利益としての読み込みが厳格に否定される傾向にあり、答案では「反射的利益」との対比で論述する必要がある。
事件番号: 昭和44(行ツ)67 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: 棄却
特許法(大正一〇年法律第九六号)四三条五項に基づく特許権の存続期間の延長の出願に対する不許可処分の取消の訴は、右特許権の出願公告の日から二五年を経過したときは、訴の利益を欠くものとして却下すべきである。
事件番号: 平成4(行ツ)125 / 裁判年月日: 平成4年11月20日
【結論(判旨の要点)】商標登録の取消審判を請求し得る「利害関係人」とは、当該登録の存続により自己の権利や法的利益に直接的な影響を受ける者に限られ、単なる事実上の利害関係を有するに過ぎない者は含まれない。 第1 事案の概要:本件では、被上告人から商標「ポピー」の商標登録の取消審判が請求された。上告人は、被上告人が当該商標…
事件番号: 昭和57(行ツ)149 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
公有水面埋立法(昭和四八年法律第八四号による改正前のもの)二条の埋立免許及び同法二二条の竣功認可の取消訴訟につき、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有するにすぎない者は、原告適格を有しない。
事件番号: 平成8(行ツ)76 / 裁判年月日: 平成11年11月25日 / 結論: 棄却
都市計画事業の事業地の周辺地域に居住し又は通勤、通学しているが事業地内の不動産につき権利を有しない者は、都市計画法五九条二項に基づく同事業の認可処分又は同条三項に基づく同事業の承認処分の取消しを求める原告適格を有しない。