判旨
不法行為に基づく損害賠償請求において、過失相殺を行うに当たり、被害者本人の過失だけでなく、被害者と身分上ないし生活上一体をなすとみられる関係にある者の過失を考慮することができる。
問題の所在(論点)
民法722条2項の「被害者に過失があつたとき」に、被害者本人の過失だけでなく、監護者等の過失を含めることができるか(「被害者側の過失」の成否)。
規範
不法行為における過失相殺(民法722条2項)において考慮されるべき「被害者の過失」には、被害者本人の過失のみならず、被害者と身分上・生活上一体をなすとみられる関係にある者の過失(被害者側の過失)も含まれる。これは、損害の公平な分担という制度趣旨に基づく。
重要事実
被害者(幼児)が道路を横断中、加害者の運転する車両にはねられ負傷した。当時、被害者の監護にあたっていた者(親など)には、交通状況を十分に注視せず漫然と被害者を歩行させた点について過失が認められる状況であった。
あてはめ
被害者が幼児であり事理弁識能力を欠く場合であっても、損害の公平な分担の見地から、被害者と身分上・生活上一体をなすとみられる関係にある監護者の過失を考慮すべきである。本件において、被害者本人の過失が認められなくとも、その監護者が負うべき注意義務を怠った事実は、実質的に被害者側の過失として過失相殺の対象となり、賠償額を減額することが認められる。
結論
監護者の過失を被害者側の過失として考慮し、過失相殺を行うことができる。
実務上の射程
乳幼児や事理弁識能力を欠く者が被害者となった事案において、家族や監護者の過失を過失相殺の対象とする際のリーディングケースである。答案上は、被害者本人の過失を問えない場合に、公平の観点から「被害者側の過失」を論じる根拠として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和35年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法722条2項の過失相殺における監護者の過失の有無は、加害者と被害者の公平な損失分担という制度趣旨に照らし、事故現場の状況や監護の態様を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:加害者は、軽自動二輪車を時速20kmで進行中、幼児である被害者を視認した。被害者が進路上に走り出るのを発見したが、…
事件番号: 昭和44(オ)912 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づく損害賠償請求において、被害者の持病や身体的特徴が損害の発生や拡大に寄与した場合、特段の事情がない限り、公平の理念に基づき民法722条2項を類推適用して賠償額を減額することができる。 第1 事案の概要:被害者は、加害者の運転する車両に追突される事故に遭った。被害者には事故前から、身体…