現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向け,内容虚偽の契約書類を提出した行為は,刑法96条の3第1項の「公の競売又は入札の公正を害すべき行為」に当たるが,上記虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り(判文参照),その行為の時点をもって,刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」とはならない。
現況調査に訪れた執行官に対して虚偽の事実を申し向けるなどした刑法96条の3第1項該当行為があった時点が刑訴法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」とはならないとされた事例
刑法96条の3第1項,刑訴法253条1項
判旨
競売入札妨害罪(刑法96条の3第1項)における「犯罪行為が終つた時」とは、虚偽の事実の陳述等に基づく競売手続が進行する限り、その進行中には至らない。したがって、執行官への虚偽陳述時ではなく、その後の手続進行中も犯罪行為は継続していると解される。
問題の所在(論点)
執行官に対して虚偽の事実を陳述し、内容虚偽の書類を提出するなどの偽計を用いた場合、競売入札妨害罪の公訴時効の起算点となる「犯罪行為が終つた時」(刑訴法253条1項)はいつか。
規範
競売入札妨害罪において、偽計を用いる行為がなされた場合、その時点をもって直ちに刑事訴訟法253条1項にいう「犯罪行為が終つた時」となるのではない。当該偽計に基づく競売手続が進行する限り、公の競売の公正を害すべき状態は継続しており、手続が進行している間は「犯罪行為が終つた時」には至らないと解するのが相当である。
重要事実
被告人らは共謀の上、会社所有物件の競売を妨害しようと企て、執行官の現況調査に際して虚偽の賃貸借関係を申し立て、虚偽の契約書類を提出した。これにより、評価人は不当に廉価な不動産評価書を作成・提出し、裁判所は不当な最低売却価額を決定した。さらに裁判所職員が、虚偽事実の記載された現況調査報告書等の写しを入札希望者の閲覧に供した。被告人らは、執行官への虚偽陳述等から3年以上経過した後に起訴されたため、公訴時効(3年)の成否が争点となった。
事件番号: 昭和63(あ)756 / 裁判年月日: 平成元年2月17日 / 結論: 棄却
不動産登記法三〇条、三一条に基づく官公署の登記の嘱託も、刑法一五七条一項にいう「申立」に当たる。
あてはめ
本件では、被告人Bが執行官に対して虚偽の陳述・書類提出を行った行為は、偽計にあたり公の競売の公正を害すべき行為に該当する。しかし、本罪の保護法益である競売の公正に対する侵害の危険は、その後の評価書の作成、最低売却価額の決定、さらには現況調査報告書等の閲覧供覧といった競売手続の進行に伴って継続・増幅しているといえる。このように虚偽の事実に基づき競売手続が進行している以上、いまだ犯罪行為は終了していないと評価される。
結論
被告人らの行為について、競売手続が進行する限り「犯罪行為が終つた時」には至らないため、公訴時効は完成しておらず、本件公訴提起は有効である。
実務上の射程
本判決は、競売入札妨害罪の時効起算点を、実行行為(偽計)の完了時ではなく、その効果が及ぶ手続の進行中まで引き延ばしたものである。実務上は、行為時(陳述時)から3年を経過していても、手続が継続していれば起訴が可能となる重要な判断基準である。答案では、単なる即成犯として扱うのではなく、手続の性質に着目した継続的な構成を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)6836 / 裁判年月日: 昭和31年3月9日 / 結論: 破棄差戻
第一審判決の確定した事実は「…(判決参照)…」というのである。しかし、本件記録に徴すれば、Aが、被告人のBに対する前記第五六一九一号公正証書による貸金債権六五〇〇〇円の譲渡契約を被告人との間に締結したのは、Aにおいて、右貸金債権が未だ消滅せず尚存在するものと信じたが故か、或は被告人において右公正証書の執行正本を入手し得…
事件番号: 平成19(あ)2355 / 裁判年月日: 平成21年7月14日 / 結論: 棄却
刑法96条の2にいう「強制執行」には,民事執行法1条所定の「担保権の実行としての競売」が含まれる。
事件番号: 平成26(あ)1197 / 裁判年月日: 平成28年12月5日 / 結論: 破棄自判
被告人が暴力団員との間で当該暴力団員に土地の所有権を取得させる旨の合意をし,被告人が代表者を務める会社名義で当該土地を売主から買い受けた場合において,当該土地につき売買契約を登記原因とする所有権移転登記等を当該会社名義で申請して当該登記等をさせた行為について,売買契約の締結に際し当該暴力団員のためにする旨の顕名が一切な…