信号機等により交通整理の行われていない交差点を南から北に直進しようとした加害者の運転する自動車が,同交差点の北側出口付近の自転車横断帯の北側に接する横断歩道上を東から西に横断中の被害者の運転する自転車に衝突して被害者を負傷させた場合において,上記自動車の進行してきた道路は交差点手前で道路標識等により一時停止すべきことが指定されていたこと,上記自転車が自転車横断帯の北側表示線の中心からわずかに約0.8m離れた所を横断していたこと,上記自動車が進行してきた方向から上記自転車の進行してくる方向への見通しを妨げるものは特になかったことなど判示の事実関係の下では,道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)別表第1の2の表の適用に関し,被害者が上記自動車に気が付かずその動静に注意しないまま横断歩道上を横断しようとしたことをその不注意と評価すべきでなく,上記事故は,専ら加害者が自転車横断帯等における自転車の安全を確保する義務及び交差点安全進行義務を怠るという不注意によって発生したものというべきである。
信号機等により交通整理の行われていない交差点において加害者の運転する自動車が自転車横断帯に接する横断歩道上を横断中の被害者の運転する自転車に衝突して被害者を負傷させた事故が道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)別表第1の2の表の適用に関し専ら加害者の不注意によって発生したものとされた事例
道路交通法36条4項,道路交通法38条1項,道路交通法43条,道路交通法103条1項5号,道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)38条5項1号イ,道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)別表第1の2の表,道路交通法施行令(平成16年政令第390号による改正前のもの)別表第2
判旨
信号機のない交差点において、自動車運転者が一時停止規制や自転車横断帯等の優先義務、交差点安全進行義務(道路交通法36条4項、38条1項)を怠って事故を起こした場合、被害者が自動車に気付かずその動静に注意しないまま横断したとしても、特段の事情がない限り、被害者の不注意と評価すべきではなく、「専ら」当該運転者の不注意によって発生した事故に当たると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
被害者が自動車の動静を注視せずに交差点に進入したという事情がある場合に、道路交通法施行令別表第1の2の表にいう「専ら」運転者の不注意によって発生した事故といえるか(運転免許取消処分の適法性)。
規範
道路交通法施行令別表第1の2の表に定める付加点数の要件である「専ら」運転者の不注意によって発生した事故といえるかは、道路交通法上の優先関係や、運転者に課せられた基本的義務(自転車横断帯における自転車の安全確保義務や交差点安全進行義務等)の内容に照らして判断される。被害者が運転者の義務遵守を信頼できる立場にある場合、被害者が運転者の動静を注視していなかったとしても、これを被害者の不注意と評価して「専ら」の要件を否定することはできない。
事件番号: 昭和47(行ツ)100 / 裁判年月日: 昭和51年3月23日 / 結論: 棄却
道路交通法施行令(昭和四三年政令第二九八号による改正前のもの)三八条一号ニ、同条二号ハにいう「違反行為」とは、故意によるか過失によるかを問わないものと解すべきである。
重要事実
被上告人(78歳)は、一時停止規制のある交差点を普通自動車で直進する際、いったん停止後に再発進したが、見通しを妨げるものがない状況下で、交差道路の自転車横断帯付近を走行する自転車(被害者・62歳)を見落とした。被上告人は加速し、時速15kmで自転車と衝突させ、重傷を負わせた。一方、被害者は死角となっていた右方の安全に気を取られ、被上告人車の方向を注視せずに交差点に進入していた。上告人は、本件事故が「専ら被上告人の不注意」によるものとして点数を付し、免許取消処分を行った。
あてはめ
本件交差点では、被上告人側に一時停止規制があり、交差道路側が優先関係にあった。また、衝突地点は自転車横断帯に近接する横断歩道上であり、被上告人には自転車の通行を優先させる義務(道交法38条1項)および交差点安全進行義務(同36条4項)があった。これらは交通事故防止上の基本的義務であり、被害者は被上告人がこれらを遵守することを信頼できる立場にあった。見通しを妨げるものがない以上、被上告人は容易に事故を回避できたといえる。したがって、被害者が被上告人車に気付かず動静に注意しなかったことは、被害者の不注意とは評価できず、事故の原因は被上告人の義務違反に集約される。
結論
本件事故は「専ら被上告人の不注意」によって発生したものと認められる。したがって、累積点数が取消基準である15点に達することから、本件免許取消処分は適法である。
実務上の射程
行政処分(運転免許取消)における付加点数の算定基準の解釈。特に「専ら」の要件について、道路交通法上の優先関係や基本的義務の帰属を重視し、被害者の軽微な前方不注視を被害者側の不注意として考慮しない判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和37(オ)49 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 破棄自判
タクシーの運転手が転回禁止区域における転回という、それ自体では免許停止処分の事由に該当するにすぎない違反行為をした場合であつても、公安委員会が、右違反行為はさきの免許停止処分の期間満了の日から起算して一年以内になされたものであり、しかも右運転手には違反歴がある等判示のような事情を勘案し、同運転手に対してした免許取消処分…
事件番号: 平成17(あ)1743 / 裁判年月日: 平成18年2月27日 / 結論: 棄却
1 乗車定員が11人以上である大型自動車の座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった場合においても,乗車定員の変更につき国土交通大臣が行う自動車検査証の記入を受けていないときは,当該自動車はなお道路交通法上の大型自動車に当たる。 2 座席の一部が取り外されて現実に存する席が10人分以下となった大型自動…
事件番号: 昭和28(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁による運転免許取消処分が裁量権の範囲を逸脱したとは認められず、また憲法25条は国家の責務を宣言する趣旨であって、個人の現実的な生活権を直接保障するものではない。 第1 事案の概要:上告人は、B県公安委員会から受けた運転免許取消処分について、当該処分が生存権を侵害し違法であると主張して争った。…