1 動産譲渡担保が同一の目的物に重複して設定されている場合,後順位譲渡担保権者は私的実行をすることができない。 2 構成部分の変動する集合動産を目的とする対抗要件を備えた譲渡担保の設定者が,その目的物である動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合,当該譲渡担保の目的である集合物から離脱したと認められない限り,当該処分の相手方は目的物の所有権を承継取得することはできない。
1 動産譲渡担保が重複設定されている場合における後順位譲渡担保権者による私的実行の可否 2 構成部分の変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合における処分の相手方による承継取得の可否
(1,2につき)民法369条(譲渡担保)
判旨
1. 種類、所在場所及び量的範囲を指定する手法により目的物が特定された集合動産譲渡担保権の設定は、特段の事情がない限り、目的物の範囲に属する動産が棚卸資産として売却等の通常の営業過程を通じて処分されることを当然に予定しており、その処分の相手方は、当該譲渡担保権の拘束を受けない完全な所有権を取得する。 2. 集合動産譲渡担保権者が占有改定により対抗要件を備えた後、債務者が通常の営業過程を逸脱して目的物を処分した場合、当該処分が譲渡担保権の設定に先立ってされた別の集合動産譲渡担保権の設定に基づく対抗要件(占有改定)の具備後になされたものであれば、後者の譲渡担保権者は先行する譲渡担保権に対して自己の権利の優先を主張できず、目的物の所有権を取得できない。
問題の所在(論点)
1. 集合動産譲渡担保において、債務者による目的物の処分が有効となる「通常の営業過程」の範囲。 2. 同一の集合動産について重複して譲渡担保権が設定された場合における、占有改定による対抗要件の優劣と権利取得の可否。
規範
1. 集合動産譲渡担保において、種類、所在場所及び量的範囲の指定によって目的物が特定されている場合、その範囲内の動産は、通常の営業過程(販売等)による処分が予定されており、その処分を受けた第三者は確定的に所有権を取得する。 2. 一方で、通常の営業過程を逸脱した処分が行われた場合、譲渡担保権の対抗関係は、民法178条に従い、占有改定を含む引渡しの前後によって決する。集合動産の場合、対抗要件具備後に他の譲渡担保権の設定を受けても、後順位者は先順位者に優先し得ない。
事件番号: 昭和35(オ)998 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
所有者から物の占有権限を伝来取得したと主張する占有者は、前主たる所有者に対して民法第一八八条の権利推定を援用しえないと同様に、右所有者の包括承継人に対しても、これを援用できない。
重要事実
1. X(上告人)はA社との間で、A社所有の養殖ブリを目的とする「第1契約(集合動産譲渡担保)」を締結し、占有改定による引渡しを受けた。 2. その後、A社はY(被上告人)との間で、同一のブリを目的とする「第2契約(集合動産譲渡担保)」を締結し、同様に占有改定による引渡しを行った。 3. Yは、第2契約に基づき、A社からブリの「買い戻し」および「販売委託」の形式で処分を受け、一部のブリを搬出した。 4. Xは、Yに対し、ブリの所有権を主張して明渡し等を求めた。
あてはめ
1. Yへの処分(第2契約)は、通常の販売ではなく、既存債務の担保を目的とする異例の形態であり、「通常の営業過程」における処分とはいえない。したがって、当然に所有権を取得する余地はない。 2. XはYに先立ち占有改定による引渡しを受けて対抗要件を具備している。集合動産譲渡担保において、対抗要件を具備した後は、債務者が同一目的物について重ねて譲渡担保権を設定し対抗要件を具備させても、後順位者(Y)は有効に権利を取得できず、先順位者(X)に対抗できない。 3. Yがブリを搬出した行為は、Xの優先的権利を侵害するものであり、Yは所有権取得を主張できない。
結論
Xは第1順位の譲渡担保権者として対抗要件を具備しており、通常の営業過程を逸脱してなされたYへの処分に対し優先する。したがって、Yの権利取得を認めた原審の判断には法令違反がある。
実務上の射程
集合動産譲渡担保における「通常の営業過程」の解釈指針を示すとともに、二重譲渡的状況における対抗要件(占有改定)の先後による優先関係を明確にした点で重要である。実務上、担保権設定後の処分が通常の販売か担保目的の流用かを区別する基準となる。
事件番号: 昭和36(オ)505 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
一 売渡人以外の者から買受物件の占有移転を受けた場合には、その者が売渡人の占有代理人であるようなときでなければ、買受人は右物件を善意取得できない。 二 荷渡依頼書の交付によつて、これに記載された物件の所有権が被交付者に移転するものとは解せられない。