平成12年6月に施行された衆議院議員総選挙までに国会が精神的原因によって投票所に行くことが困難な者の選挙権行使の機会を確保するための立法措置を執らなかったことは,上記の者については,その精神的原因が多種多様でその状態が必ずしも固定的ではなく,身体障害者手帳に記載される障害の程度等のように既存の公的な制度によって投票所に行くことの困難性に結び付くような判定を受けているものではない上,上記選挙までに上記の者に係る投票制度の拡充が国会で立法課題として取り上げられる契機があったとは認められないという事情の下では,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受けるものではない。 (補足意見がある。)
平成12年6月に施行された衆議院議員総選挙までに国会が精神的原因によって投票所に行くことが困難な者の選挙権行使の機会を確保するための立法措置を執らなかったことは国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとされた事例
国家賠償法1条1項,憲法15条1項,3項,憲法41条,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法44条1項,公職選挙法49条
判旨
精神的原因により投票所に行くことが極めて困難な者に対して、郵便投票等の代替的な投票方法を認める立法措置を講じていなかったとしても、本件各選挙当時において、それが明白に必要不可欠であり、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠っていたとはいえず、国家賠償法1条1項の適用上、違法とは評価されない。
問題の所在(論点)
国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となる要件、及び、精神的原因による投票困難者に投票の機会を確保する立法措置を講じなかったことが同法上の違法評価を受けるか。
規範
国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは、単に立法不作為が憲法に違反するだけでなく、例外的に、(1)国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害することが明白な場合や、(2)権利行使の機会を確保するための立法措置が「必要不可欠」であり、それが「明白」であるにもかかわらず、国会が「正当な理由なく長期にわたってこれを怠る」場合に限られる(最判平17.9.14参照)。
重要事実
上告人は重度の精神発達遅滞等により、外出先で他人の姿を見ると身体が硬直する等の症状があり、投票所に行くことが極めて困難であった。身体障害者等には郵便投票制度が認められていたが、精神的原因による者は対象外であった。本件各選挙(平12年)まで、精神的原因による投票困難者への制度拡充は国会でほとんど議論されておらず、日弁連等の要望書にも記載がなかった。第1審判決後、初めて国会等で議論がなされる契機が生じた。
あてはめ
選挙権の重要性から、精神的原因による投票困難者についても、選挙の公正を確保しつつ行使を認めることが事実上不可能・著しく困難でない限り、国は行使を可能にする措置を執る責務がある。しかし、精神的原因は多種多様で固定的ではなく、既存の公的制度(療育手帳等)が直ちに投票の困難性と結び付くわけではない。また、身体障害とは異なり、本件各選挙当時において本件課題が国会で議論された事実はなく、立法措置を求める社会的契機も乏しかった。したがって、立法が「必要不可欠」であることが「明白」であったとは認められない。
結論
本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。上告棄却。
実務上の射程
在宅投票制度や郵便投票制度の不備について国家賠償請求がなされた際、立法不作為の違法性を判断する基準として活用できる。特に、対象者の判定の難易度や、国会での議論の蓄積(立法の必要性が明白か否か)が判断の分かれ目となる。
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