固定資産税の課税標準である土地の「適正な時価」とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうものであり,これを当該土地から得ることのできる収益を基準に資本還元して導き出される価格をいうものと解することはできず,また,一般に,土地の取引価格は,上記の価格以下にとどまるものでなければ正常な条件の下に成立したものとはいえないということもできない。
固定資産税の課税標準である土地の「適正な時価」と同土地から得ることのできる収益を基準に資本還元して導き出される価格
地方税法(平成11年法律第15号による改正前のもの)341条5号,地方税法349条1項
判旨
固定資産税の課税標準である土地の「価格」とは、当該土地の客観的な交換価値をいう。
問題の所在(論点)
地方税法341条5号(当時)にいう土地の「価格」(適正な時価)は、その土地から得られる収益を基準に算定される収益還元価格に限定されるか。
規範
地方税法上の土地の「価格」(適正な時価)とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいう。固定資産税は、土地の資産価値に着目し、その所有という事実に担税力を認めて課する財産税であるから、個々の土地の収益性の有無にかかわらず課されるものであり、その価格が収益還元価格に限定される根拠はない。
重要事実
1. 東京都知事は、本件土地1及び2の平成9年度の価格を決定し、土地課税台帳に登録した。2. 納税者であるAは、当該価格を不服として審査の申出をしたが、固定資産評価審査委員会(上告人)はこれを棄却する決定(本件決定)をした。3. Aの承継人である被上告人らは、本件決定の取消しを求めて提訴した。4. 原審は、固定資産税を「当該固定資産から得られる収益に課されるもの」と捉え、適正な時価は収益還元価格により算定されるべきであるとして、登録価格が収益還元価格を超える部分を取り消した。
事件番号: 平成10(行ヒ)41 / 裁判年月日: 平成15年6月26日 / 結論: 棄却
1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が同期日における当該土地の客観的な交換価値を上回る場合には,上記価格の決定は違法となる。 2 固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成8年自治省告示第192号による改正前のもの)に定める市街地宅地評価法にのっとり,いわゆる7割評価通達…
あてはめ
1. 固定資産税の本質は、土地の所有という事実に認められる担税力に着目した財産税であり、収益に着目した収益税ではない。2. したがって、その課税標準は「客観的な交換価値」を基準とすべきである。3. 原審は、本件各土地の客観的な交換価値を確定することなく、収益還元価格のみを基準として登録価格の適法性を判断しており、法の解釈を誤っている。
結論
固定資産税の課税標準となる土地の価格は、客観的な交換価値(取引価格)を指し、収益還元価格に限定されない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
固定資産税の登録価格の違法性を争う訴訟において、「適正な時価」の定義を明確にした重要判例である。答案作成上は、収益還元法以外の評価手法(売買実例比較法等)による評価も適法な「客観的な交換価値」の算定に含まれ得ることを示す根拠となる。
事件番号: 平成24(行ヒ)79 / 裁判年月日: 平成25年7月12日 / 結論: 破棄差戻
1 固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録された価格の決定は違法となる。 2 評価対象の土地に適用される固定資産評価基準の定める評価方法が…
事件番号: 平成14(行ヒ)181 / 裁判年月日: 平成17年7月11日 / 結論: その他
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格についての固定資産評価審査委員会の決定の取消訴訟において,裁判所が,同期日における当該土地の適正な時価又は固定資産評価基準によって決定される価格を認定し,同委員会の認定した価格が上記の適正な時価等を上回っていることを理由として同決定を取り消す場合には,…
事件番号: 平成11(行ヒ)182 / 裁判年月日: 平成15年7月18日 / 結論: 破棄差戻
固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成10年自治省告示第87号による改正前のもの)が定める標準家屋の再建築費評点数に比準して家屋の再建築費評点数を付設する方法及び同評点数に乗ずべき経過年数に応ずる減点補正率並びに同基準に基づいて自治大臣が指示した評点1点当たりの価額に一般的な合理性があるという事情の下に…
事件番号: 平成28(行ヒ)406 / 裁判年月日: 平成30年7月17日 / 結論: 破棄差戻
固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日における土地の価格について,当該土地に接する街路が建築基準法42条1項3号所定の道路に該当するための要件を満たすか否かは明らかでないとしながら,上記街路が同号所定の道路に該当する旨の市長の判定がされていること等を理由に,建築確認を受けることができないために当該土地上に建…