主婦を強姦目的で殺害した上姦淫しさらにその場で生後11か月の同女の長女をも殺害するなどした当時18歳の被告人につき第1審判決の無期懲役の科刑を維持した控訴審判決が量刑不当として破棄された事例
刑法(平成17年法律第50号による改正前のもの)11条,刑法(平成16年法律第156号による改正前のもの)177条前段,刑法(平成16年法律第156号による改正前のもの)181条,刑法(平成16年法律第156号による改正前のもの)199条,刑訴法411条2号,少年法(平成12年法律第142号による改正前のもの)51条
判旨
死刑制度を存置する現行法制下では、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡および一般予防の見地から極刑がやむを得ないと認められる場合には、死刑を選択せざるを得ない。特に、犯行時18歳以上の少年であっても、犯行の残虐性や結果の重大性に鑑み、特に酌量すべき事情がない限り、死刑を選択すべきである。
問題の所在(論点)
犯行時18歳少年の殺人・強姦致死事件において、永山基準に照らした死刑選択の可否、および少年の可塑性や殺害の非計画性が「特に酌量すべき事情」として死刑を回避するに足りるか。
規範
死刑の選択に当たっては、いわゆる「永山基準」に基づき、犯行の罪質、動機、態様(殺害手段の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきである。犯行時18歳以上の少年については、少年法51条の趣旨に鑑み年齢を考慮すべき一事情とするが、改善更生の可能性(可塑性)のみをもって直ちに死刑を回避すべきではなく、罪責の重大性に対し「特に酌量すべき事情」が認められない限り、極刑の選択を免れない。
重要事実
被告人(当時18歳1か月)は、強姦目的で作業員を装い面識のない被害者(23歳女性)宅に侵入。抵抗した被害者の首を絞めて殺害し、姦淫した。さらに、泣き止まない被害者の長女(11か月)を床に叩きつけ、紐で首を絞めて殺害した。その後、財布を窃取し、死体を隠匿した。被告人は家庭環境が不遇であったこと、前科がないこと、可塑性が否定できないこと、殺害自体には計画性がないこと等の事情があった。原審はこれらを重視し、無期懲役を維持した。
事件番号: 平成20(あ)1136 / 裁判年月日: 平成24年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯行時18歳の少年であっても、罪質、動機、態様、結果の重大性に鑑みれば、死刑の選択を回避すべき「特に酌量すべき事情」があるとはいえず、死刑に処した原判決の判断は是認される。 第1 事案の概要:当時18歳の被告人が、23歳の主婦を強姦しようと暴行を加え、激しく抵抗されたため殺害して強姦し、さらに犯行…
あてはめ
まず、2名の尊い命を奪った結果は極めて重大であり、動機に酌むべき点はなく、犯行態様も冷酷・非人間的である。次に、殺害の計画性欠如について、強姦を計画しその遂行・発覚防止のために殺害に及んだ以上、死刑回避の決定的な要因にはならない。また、被告人の反省は不十分であり、犯跡隠蔽工作等に照らせば犯罪的傾向も軽視できない。生育環境の不遇さも劣悪とまではいえない。これらを総合すれば、本件は特に酌量すべき事情がない限り死刑を選択すべき事案である。原審は、年齢や可塑性を過度に重視し、死刑回避の当否に関する審理を尽くしておらず、量刑判断の評価を誤ったといえる。
結論
被告人の罪責は誠に重大であり、死刑を回避するに足りる「特に酌量すべき事情」の存否について審理を尽くさず無期懲役とした原判決は、刑の量定が甚だしく不当である。よって原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
裁判員裁判や少年事件の死刑選択において、可塑性(将来の更生可能性)がどの程度の比重を持つかを判断する際の最重要リーディングケース。特に、複数の死者が出た場合の「死刑回避の例外事情」のハードルを高く設定したものと解される。
事件番号: 昭和58(あ)581 / 裁判年月日: 平成2年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、殺害方法の執拗性・残虐性、被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状等、一切の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重いと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、農作業中の主婦を強姦目的で襲い、抵抗されたため頸部を強…
事件番号: 平成15(あ)894 / 裁判年月日: 平成18年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用が許容される基準(いわゆる永山基準)の提示 第1 事案の概要:被告人は、拳銃を窃取して所持し、約1ヶ月の間に4名を射殺した。犯行は計画的かつ執拗であり、被害者らに落ち度はない。遺族の被害感情は峻烈であり、社会に与えた恐怖も甚大である。一方で、犯行当時、被告人は19歳の未成年であり、家庭環…
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…