「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする自家用自動車総合保険契約の約款に基づき,車両の水没が保険事故に該当するとして,保険者に対して車両保険金の支払を請求する者は,事故の発生が被保険者の意思に基づかないものであることについて主張,立証すべき責任を負わない。
「衝突,接触…その他偶然な事故」を保険事故とする自家用自動車総合保険契約の約款に基づき車両の水没が保険事故に該当するとして車両保険金の支払を請求する場合における事故の偶発性についての主張立証責任
商法629条,641条,民法91条,民訴法第2編第4章第1節 総則
判旨
自賠法3条に基づく自動車運行供用者責任において、運行供用者は自らが免責要件(同条但書各号)を具備していることを主張・立証すべき責任を負い、被害者側が当該要件の不充足を立証する必要はない。
問題の所在(論点)
自賠法3条に基づく賠償責任において、同条但書に規定される免責要件(特に自動車の構造上の欠陥又は機能の障害の有無)に関する主張・立証責任はどちらの当事者が負うべきか。
規範
自動車損害賠償保障法3条但書は、自己及び運転者が運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことの三要素を免責要件として規定している。これらは責任発生を阻害する抗弁事由であり、その主張・立証責任は、責任を免れようとする運行供用者側が負うものと解すべきである。
重要事実
上告人(被害者)は、被上告人が運行供用者となる自動車との事故により損害を被ったとして、損害賠償を請求した。原審は、自賠法3条但書の免責要件のうち、自動車の構造上の欠陥や機能の障害(構造欠陥等)の有無について、上告人がその存在を主張・立証しない限り、被上告人の責任を否定し得るとの判断を示した。
あてはめ
自賠法3条の文言は「但し…を証明したときは、この限りでない」と明定されており、これは運行供用者側が免責されるための条件を定めたものである。不法行為法の特別法として被害者保護を図る同法の趣旨に鑑みれば、構造欠陥等の不存在という消極的事実についても、運行供用者側が立証責任を負うと解するのが法文の構造及び立法の意図に合致する。したがって、被害者側が構造欠陥等の存在を主張・立証しなかったとしても、それだけで運行供用者が責任を免れることはできない。
結論
被上告人(運行供用者)は、自ら自賠法3条但書所定の免責事由を主張・立証しない限り、同条に基づく損害賠償責任を免れることはできない。原判決には立証責任の分配に関する法令解釈の誤りがある。
実務上の射程
自賠法3条の事案において、被害者は「運行によって他人の生命・身体を害したこと」を立証すれば足りることを示す。答案上は、供用者側からの反論として但書の免責要件を検討する際、その立証責任が供用者にあることを明示してあてはめを行うべきである。
事件番号: 昭和43(オ)528 / 裁判年月日: 昭和43年7月25日 / 結論: 棄却
(省略)