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債務者の貸金業者に対する貸金の弁済について貸金業の規制等に関する法律43条1項又は3項の適用を認めた高等裁判所の上告審としての判決が特別上告審において法令の違反があるとして職権により破棄された事例
民訴法325条2項,民訴法327条,貸金業の規制等に関する法律43条1項,3項
判旨
貸金業法18条1項の受取証書において、施行規則に基づき契約年月日の記載を契約番号で代えることは法の委任を逸脱し無効である。また、制限超過利息の不払により期限の利益を喪失する旨の特約は、債務者に支払を事実上強制するものであり、特段の事情がない限り「任意に支払った」とは認められない。
問題の所在(論点)
1. 貸金業法施行規則15条2項のうち、法定事項(契約年月日等)の記載を契約番号等で代えることができるとした規定は、委任の範囲を逸脱し無効か。 2. 制限超過利息の支払遅滞を期限の利益喪失事由とする特約がある場合、債務者による制限超過部分の支払は、法43条1項の「任意に支払った」といえるか。
規範
1. 貸金業法18条1項の法定事項を内閣府令により他の記載で代えることは、同法の委任の範囲を逸脱し無効である。 2. 制限超過利息の不払を期限の利益喪失事由とする特約は、債務者に不利益回避のための事実上の強制を与える。したがって、同特約下での制限超過部分の支払は、誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、自己の自由な意思に基づく「任意の支払」(同法43条1項)とは認められない。
重要事実
貸金業者である被上告人は、上告人が連帯保証した貸付けにおいて、利息制限法を超える利率(年29.8%)および遅延損害金(年36.5%)を定めた。契約には、利息等の支払を遅滞した際に催告なく期限の利益を喪失する特約があった。被上告人は弁済受領時、受取証書に契約年月日の代わりに「契約番号」を記載して交付していた。その後、被上告人はみなし弁済(法43条)の成立を主張し、連帯保証人である上告人に残元利金の支払を求めた。
あてはめ
1. 法18条1項は法定事項の記載を義務付けており、府令への委任は交付方法等に限られる。よって、契約年月日に代えて契約番号を記載した本件受取証書は、法18条1項所定の書面交付とは認められない。 2. 本件特約は、制限超過利息を支払わなければ残元本の一括返済と高率な遅延損害金の制裁を課すものであり、債務者に制限超過部分の支払を事実上強制する。本件において、債務者がこの不利益を回避するための誤解を抱かなかったといえる特段の事情は認められないため、自由な意思に基づく弁済とは評価できない。
結論
本件各弁済について法43条1項のみなし弁済の適用は認められない。原判決および原々判決を破棄し、審理を差し戻す。
実務上の射程
みなし弁済の成立要件を厳格に解釈した重要判例である。特に期限の利益喪失特約がある場合の「任意性」を事実上否定しており、実務上、利息制限法を超える利息の有効性を主張することを極めて困難にした。答案上は、18条書面の不備(形式的要件)と任意性の欠如(実質的要件)の両面から検討する際に用いる。
事件番号: 平成15(オ)456 / 裁判年月日: 平成18年1月19日 / 結論: 破棄差戻
1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本又は約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約が付されている場合,同特約中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であ…
事件番号: 平成17(受)560 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 棄却
1 貸金業者は,貸付けに係る契約の性質上,貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に同項所定の事項について確定的な記載をすることが不可能な場合には,同書面に当該事項に準じた事項を記載すべきである。 2 貸金業者は,借主が借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができ,毎月定められた返済期日に最低返済…
事件番号: 平成16(受)424 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: 破棄差戻
1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定が付されている場合,同約定中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であ…