1 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。 2 A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効である。 (2につき補足意見がある。)
1 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例 2 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法90条の規定により無効とされた事例
(1,2につき)民法2条,民法90条,民法92条,民法263条,民法294条,憲法14条1項
判旨
入会権者の資格を原則として男子孫に限り、女子孫を差別する慣習は、性別のみによる不合理な差別であり、公序良俗(民法90条)に反し無効である。一方で、入会権を行使する単位を各世帯の代表者(世帯主)に限定する慣習は、団体の統制や世帯間の平等の観点から合理性があり、有効である。
問題の所在(論点)
入会権者の資格を「世帯主」に限定する慣習、および「原則として男子孫」に限定し女子を差別する慣習は、民法90条の公序良俗に反し無効か。
規範
1. 入会権の得喪に関する慣習が民法90条の公序良俗に反するか否かは、当該慣習が、入会団体の統制維持や各世帯間の平等といった目的に照らし、合理性を有するか否かによって判断する。 2. 性別のみを理由として女子を男子と差別する慣習は、男女の本質的平等を定める憲法の理念に照らし、格別の合理的理由がない限り、性別による不合理な差別として無効となる。 3. 世帯主(一家の代表者)であることを資格要件とする点は、入会権が歴史的に「家」に帰属する性質を有し、世帯間の公平を確保する目的があるため、合理性を有する。
重要事実
沖縄県A部落の入会地(旧杣山)から生じる駐留軍用地料の補償金配分に関し、入会団体(被告)の会員資格を巡る紛争。被告の慣習(本件慣習)では、会員資格を「独立の世帯を構える世帯主」に限定し(世帯主要件)、かつ「原則として男子孫に限る」としていた(男子孫要件)。女子孫については、50歳以上の独身者等の特例を除き、他部落の男性と婚姻した者は、配偶者死亡後に独立世帯を構えても資格を認めない運用がなされていた。原告らは、入会権者の女子孫であり、世帯主として独立の生計を営んでいたが、男子孫要件等により会員資格を否定されたため、地位確認等を求めて提訴した。
あてはめ
1. 世帯主要件について:入会権は各世帯の代表者に帰属してきた歴史的沿革があり、世帯員数にかかわらず1世帯1名とすることは、団体の統制や世帯間の平等を図る上で不合理とはいえず、公序良俗に反しない。 2. 男子孫要件について:専ら女子であることを理由に差別するものであり、団体の統制や世帯間の平等の観点からも合理的な理由は見当たらない。憲法の男女平等原則に照らせば、歴史的沿革を考慮しても正当化できず、遅くとも本件補償金請求の対象期間(平成4年以降)においては公序良俗に反し無効である。 3. 本件へのあてはめ:原告X1らは男子孫要件がなければ会員資格を認められるべき世帯主の実態がある。被告が男子孫要件の有効性を主張し、女子孫の手続を拒んでいる状況下では、入会手続を経ていないことを理由に資格を否定することは信義則上許されない。
結論
世帯主であることを要件とする部分は有効であるが、男子孫に限定する部分は無効である。したがって、世帯主の実態を備える原告X1らは、女子であることを理由に会員資格を否定されることはない(原審差し戻し)。一方、世帯主の実態がない原告X4らの請求は棄却される。
実務上の射程
入会権のみならず、地縁団体や村落共同体における性差別的な慣習を否定する際の強力な論拠となる。答案では、憲法の私人間効力(間接適用説)を背景に、民法90条の解釈において男女平等の理念を反映させる論証として活用する。世帯主要件の合憲性・有効性と、男子孫限定の違憲性・無効性を切り分けて論じるのがポイントである。
事件番号: 平成9(オ)96 / 裁判年月日: 平成11年11月9日 / 結論: その他
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自己が家督相続人として選定されたことを理由として、戸籍簿上の家督相続人を排除し自己の家督相続人たる地位を回復することを目的とする請求は、戸籍簿上の家督相続人を相手方とする家督相続回復の訴によるべきであり、選定者を相手方として家督相続人たる地位の確認を求める訴は確認の利益を有しない。