1 市町村が行う国民健康保険の保険料については,これに憲法84条の規定が直接に適用されることはないが,同条の趣旨が及ぶと解すべきであるところ,国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,社会保険としての国民健康保険の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある。 2 旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)が,8条(平成6年旭川市条例第29号による改正前のもの及び平成10年旭川市条例第41号による改正前のもの)において,国民健康保険の保険料率の算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で,12条3項において,旭川市長に対し,保険料率を同基準に基づいて決定して告示の方式により公示することを委任したことは,国民健康保険法81条に違反せず,憲法84条の趣旨に反しない。 3 旭川市長が旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)12条3項の規定に基づき平成6年度から同8年度までの各年度の国民健康保険の保険料率を各年度の賦課期日後に告示したことは,憲法84条の趣旨に反しない。 4 旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)19条1項が,当該年において生じた事情の変更に伴い一時的に保険料負担能力の全部又は一部を喪失した者に対して国民健康保険の保険料を減免するにとどめ,恒常的に生活が困窮している状態にある者を保険料の減免の対象としていないことは,国民健康保険法77条の委任の範囲を超えるものではなく,憲法25条,14条に違反しない。 (1〜3につき補足意見がある。)
1 市町村が行う国民健康保険の保険料と憲法84条 2 国民健康保険の保険料率の算定基準を定めた上でその決定及び告示を市長に委任している旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)8条(平成6年旭川市条例第29号による改正前のもの及び平成10年旭川市条例第41号による改正前のもの),12条3項と国民健康保険法81条及び憲法84条 3 旭川市長が平成6年度から同8年度までの各年度の国民健康保険の保険料率を各年度の賦課期日後に告示したことと憲法84条 4 恒常的に生活が困窮している状態にある者を国民健康保険の保険料の減免の対象としていない旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)19条1項と国民健康保険法77条及び憲法25条,14条
(1〜3につき)憲法84条,国民健康保険法(平成9年法律第124号による改正前のもの)76条 (1につき)国民健康保険法5条,国民健康保険法(平成14年法律第102号による改正前のもの)79条の2 (1,2につき)国民健康保険法81条 (2につき)旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成6年旭川市条例第29号による改正前のもの)8条,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成10年旭川市条例第41号による改正前のもの)8条,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成9年旭川市条例第8号による改正前のもの)9条,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成12年旭川市条例第23号による改正前のもの)10条,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成9年旭川市条例第8号による改正前のもの)11条,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成7年旭川市条例第14号による改正前のもの)12条1項,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成8年旭川市条例第8号による改正前のもの)12条1項,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号。平成9年旭川市条例第8号による改正前のもの)12条1項 (2,3につき)旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)12条3項 (3につき)旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)13条 (4につき)憲法14条,憲法25条,国民健康保険法6条6号,国民健康保険法77条,旭川市国民健康保険条例(昭和34年旭川市条例第5号)19条1項
判旨
国民健康保険料は憲法84条に規定する租税ではないが、賦課徴収の強制性から同条の趣旨が及ぶ。しかし、賦課要件が条例で明確に定められている限り、料率の算定を市長の告示に委任しても憲法および法81条に違反しない。
事件番号: 平成15(行ツ)202 / 裁判年月日: 平成18年3月28日 / 結論: 棄却
農作物共済に係る共済掛金及び賦課金の具体的決定を農業共済組合の定款又は総会若しくは総代会の議決にゆだねている農業災害補償法(平成11年法律第160号による改正前のもの)107条1項,農業災害補償法(平成15年法律第91号による改正前のもの)43条1項2号,86条1項,87条1項,農業災害補償法45条の2,87条3項の規…
問題の所在(論点)
国民健康保険料の賦課に憲法84条の租税法律主義(またはその趣旨)が及ぶか。また、具体的料率を条例ではなく市長の告示に委任することが、賦課要件の法的根拠を欠き違憲・違法となるか。
規範
1. 憲法84条の租税とは、公的機関が特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当する者に課する金銭給付を指す。対価性を有する国民健康保険料はこれに当たらない。 2. もっとも、強制徴収される公課には同条の趣旨(法律による適正な規律)が及ぶ。その具体的要件がどの程度明確に定められるべきかは、公課の性質、目的、強制の度合い等を総合考慮して判断する。 3. 保険料は収支均衡を図る必要があり、条例において賦課要件が専門的・技術的な細目を除き明確に定められ、恣意の余地がないならば、具体的料率の決定を執行機関に委任することも許容される。
重要事実
旭川市の国民健康保険条例(本件条例)は、保険料の賦課総額を「事業に必要な費用の見込額」から「公的補助等の収入見込額」を控除した額を基準とすると定めていた。また、具体的料率については、条例所定の算定式に基づき市長が決定し、告示するものとしていた。上告人は、賦課総額の算定基準が不明確であり、料率を告示に委任することは租税法律主義(憲法84条)や国民健康保険法81条に違反すると主張した。
あてはめ
1. 本件保険料は、保険給付という反対給付との連関性を有し、社会保険制度の枠組みにあるため租税そのものではないが、強制加入・徴収の点から憲法84条の趣旨は及ぶ。 2. 本件条例8条は賦課総額の算定基準(費用・収入の項目)を詳細に規定しており、収納率による割り戻し等の計算プロセスも合理的解釈が可能である。専門的・技術的な細目を市長に委ねることは合理的であり、予算・決算を通じた議会の民主的統制も及んでいる。 3. 条例により料率の算定方法が確定している以上、市長による告示は機械的な算定結果の公示にすぎず、恣意の介入する余地はないため、法的安定性を損なわない。
結論
本件条例の委任規定およびこれに基づく賦課処分・減免非該当処分は、憲法84条の趣旨および国民健康保険法81条に違反せず、有効である。
実務上の射程
租税以外の公課(社会保険料、負担金等)の条例委任の限界を判断するリーディングケース。答案では「租税」の定義を論じた後、「趣旨が及ぶ」とした上で、当該公課の性質(収支均衡の必要性、専門技術性)から委任の合理性を検討する枠組みとして活用する。
事件番号: 平成1(行ツ)173 / 裁判年月日: 平成2年7月20日 / 結論: 棄却
児童福祉法(昭和六一年法律第一〇九号による改正前のもの)五六条一項、二項は、憲法二五条に違反しない。
事件番号: 昭和57(行ツ)174 / 裁判年月日: 昭和59年6月21日 / 結論: 棄却
国民健康保険診療報酬審査委員会が行う国民健康保険法四五条五項の規定による療養取扱機関からの診療報酬請求に対する減点の措置及び国民健康保険法施行規則三〇条の規定による右減点の措置についての再度の考案の結果は、抗告訴訟の対象とならない。
事件番号: 昭和30(オ)478 / 裁判年月日: 昭和33年2月12日 / 結論: 棄却
一定の住民を国民健康保険に強制加入させ保険料は世帯主の町民税賦課等級に応じて納付させることにした町条例は、憲法第一九条に関係なく、憲法上の自由権および憲法第二九条第一項所定の財産権を侵害するものとはいえない。