判旨
年次有給休暇制度は正常な勤務体制の枠内で休暇を認める趣旨であるため、事業場の正常な運営を阻害する目的で、争議行為に参加するために行われる休暇請求の維持・職場離脱は、本来の休暇権の行使とはいえず、休暇は成立しない。
問題の所在(論点)
労働者が、所属する事業場の正常な運営を阻害する目的(争議行為への参加)をもってあらかじめなされた年次有給休暇の請求を維持し、職場を離脱した場合に、労働基準法上の年次有給休暇が成立するか。
規範
労働基準法上の年次有給休暇制度は、事業場において業務を運営するための正常な勤務体制が存在することを前提として、その枠内で休暇を認めるという趣旨に基づくものである。したがって、所属する事業場の正常な業務の運営を阻害する目的をもって行われる職場離脱は、本来の年次休暇権の行使とはいえない。
重要事実
国鉄(当時)の職員で労働組合の執行委員であった上告人は、事前に午後半日の年次休暇を請求していた。その後、組合がストライキの実施を決定したことを知ると、上告人は休暇の承認を事実上確認した上で請求を維持し、当日は勤務しなかった。上告人は、休暇中であったはずの時間帯に、組合の集会やスト決起集会に参加してシュプレヒコールの指揮を執ったほか、当局のスト対策に抗議して助役の職務執行を妨害するなど、争議行為において積極的な役割を果たした。
あてはめ
上告人は、自ら所属する津田沼電車区の正常な業務運営を阻害する目的をもって争議行為に参加しており、先にしていた年次休暇請求が事実上承認されていることを奇貨として当該請求を維持し、職場を離脱したといえる。このような態様での職場離脱は、正常な勤務体制を前提とする年次有給休暇制度の趣旨を逸脱するものである。具体的には、単なる休息のためではなく、積極的に業務妨害を伴う争議行為に加担するための離脱であり、評価上「正常な勤務体制の枠内」での休暇とは認められない。
結論
上告人の行為は本来の年次有給休暇権の行使とはいえないため、請求に係る時季指定日に年次休暇は成立しない。
実務上の射程
本判決は、年次有給休暇の利用目的は原則として自由であるとする一般原則(白石営林署事件等)の例外を示すものである。ストライキ等の争議行為に加担し、事業場の業務を積極的に阻害する目的が認められる場合には、権利行使の目的外利用として休暇の成立自体が否定される。答案上は、時季指定権行使の限界を論ずる際の特殊な事案として位置づけるべきである。
事件番号: 昭和41(オ)1420 / 裁判年月日: 昭和48年3月2日 / 結論: 破棄自判
一、年次有給休暇における休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であると解すべきである。 二、労働基準法三九条三項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かは、当該労働者の所属する事業場を基準として判断すべきである。
事件番号: 昭和60(行ツ)1 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 棄却
労働組合が、組合活動のため使用者の施設を自由に使用することができるとの見解のもとに、従業員食堂の使用につき使用者と真摯な協議を尽くさず、使用者の許諾を得ないまま実力を行使してこれを使用し続けてきた場合において、使用者が、労働組合からの従業員食堂の使用申入れを許諾しなかつたこと、また、許諾のないまま従業員食堂において開か…