判旨
長期・連続の年次有給休暇の時季指定に対し、使用者が代替勤務者の確保が困難である等の事情から時季変更権を行使する場合、使用者には一定の裁量的判断が認められ、その判断が不合理でなければ適法である。
問題の所在(論点)
労働者が長期・連続の年次有給休暇を時季指定した場合において、使用者による時季変更権の行使が「事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法39条3項但書)として適法となるための要件および裁量の範囲。
規範
労働者が長期・連続の年次有給休暇を時季指定した場合、使用者には、事業運営への支障の有無や修正の程度に関し、ある程度の裁量的判断が認められる。この裁量的判断が、労働基準法39条の趣旨に反し、休暇取得のための状況に応じた配慮を欠くなど不合理と認められない限り、同条3項(現4項)但書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当し、時季変更権の行使は適法となる。
重要事実
通信社の記者である被上告人は、科学技術記者クラブに単独配置され、専門知識を要する原子力関係の取材を担当していた。被上告人は約1ヶ月間の連続休暇を時季指定したが、会社側は専門記者の不在による取材への支障や代替要員確保の困難を理由に、休暇を2回に分けるよう求めた上で、指定期間の後半部分について時季変更権を行使した。しかし被上告人はこれに従わずに出国したため、会社はけん責処分等を行った。
あてはめ
まず、被上告人は専門性の高い分野を単独で担当しており、社会部内で代替者を確保することは相当に困難であった。次に、単独配置は企業経営上のやむを得ない理由によるもので、不適正な人員配置とは断定できない。また、被上告人は事前の調整なく長期休暇を指定したのに対し、会社側は休暇を分割して一部を認めるなど相当の配慮を示している。これら諸点に鑑みれば、会社が事業の正常な運営に支障が生ずると予測して時季変更権を行使した裁量的判断は、不合理とはいえない。
結論
本件時季変更権の行使は、労基法39条3項但書の要件を充足し適法である。したがって、これを無視した欠勤に対するけん責処分も有効となり得る(原判決破棄・差し戻し)。
実務上の射程
長期・連続の休暇に関するリーディングケース。単独配置などの人員体制が「不適正」とされない限り、専門業務の代替困難性は時季変更権行使を正当化する強力な要素となる。答案上は、長期休暇に伴う調整の必要性と使用者の予測の困難性を指摘した上で、裁量的判断の合理性を検討する枠組みを用いる。
事件番号: 平成8(オ)1026 / 裁判年月日: 平成12年3月31日 / 結論: 破棄差戻
事業遂行に必要な技術者の養成と能力向上を図るため、各職場の代表者を参加させて、一箇月に満たない比較的短期間に集中的に高度な知識、技能を修得させ、これを職場に持ち帰らせることによって、各職場全体の業務の改善、向上に資することを目的として行われた訓練の期間中に、訓練に参加している労働者から年次有給休暇が請求されたときは、使…