判旨
チェック・オフ中止の申入れを無視した継続は支配介入の不当労働行為に当たるが、その救済として控除済みの組合費相当額を直接組合に支払うよう命ずることは、労働委員会の裁量権を逸脱し違法である。
問題の所在(論点)
1. 組合員による中止申入れ後のチェック・オフ継続および他組合への交付が、支配介入(労組法7条3号)に当たるか。 2. 控除された組合費相当額を組合員ではなく「労働組合」へ支払うよう命ずる救済命令は、労働委員会の裁量権の範囲内か。
規範
労働委員会の救済命令には広い裁量権が認められるが、その内容は不当労働行為による侵害状態を除去・是正し、正常な労使関係を回復するという目的の限界を逸脱してはならない。救済命令によって作出される状態が、不当労働行為のなかった本来の状態や私法上の法律関係、さらには賃金全額払いの原則(労基法24条1項)から著しくかけ離れる場合には、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。
重要事実
会社には内部抗争により「参加人組合」と「訴外組合」が併存していた。参加人組合員は会社に対しチェック・オフの中止を申し入れたが、会社はこれを無視してチェック・オフを継続し、控除した金員を訴外組合に交付した。労働委員会はこれが支配介入に当たると判断し、救済命令として、会社に対し控除済みの組合費相当額を「参加人組合」へ支払うよう命じた。
あてはめ
1. 有効なチェック・オフには個々の組合員からの委任が必要であり、組合員はいつでも中止を申し入れることができる。会社が中止申入れを無視して控除を続け、他組合に交付したことは参加人組合の運営に対する支配介入に当たる。 2. 本件不当労働行為による侵害は「組合員が賃金の支払を受けられなかったこと」に由来する。本来、中止申入れがあれば金員は組合員に支払われるべきものであり、組合員への委任等の事実がないのに「組合」への支払を命ずることは、不当労働行為がなかった状態から著しくかけ離れ、労基法24条の趣旨にも抵触するため、裁量の限界を超える。
結論
1. 支配介入の不当労働行為の成立は肯定される。 2. 控除された組合費相当額を参加人組合に支払うよう命じた救済命令部分は、裁量権の逸脱として取り消されるべきである。
事件番号: 平成3(行ツ)91 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: その他
甲労働組合の内部抗争によりそれぞれ甲組合と同一名称を名乗る乙組合と丙組合とが併存するに至った後に、使用者が、甲組合とのいわゆるチェック・オフ協定に基づき、乙組合の組合員から組合費のチェック・オフを行い、これを丙組合に交付したことが不当労働行為に当たる場合であっても、右組合費相当額を、組合員個人に対してではなく、乙組合に…
実務上の射程
チェック・オフの中止申入れに関するリーディングケースであるとともに、救済命令における「原状回復」の範囲を画したもの。不当労働行為が否定されたわけではないが、救済内容が私法上の権利関係や個別労働法規(全額払原則)を無視して「組合に有利な新たな状態」を作り出すことは許されないという実務上の制約を示している。
事件番号: 平成4(行ツ)120 / 裁判年月日: 平成7年2月23日
【結論(判旨の要点)】不当労働行為救済命令で労働組合への金員支払が命じられた際、当該組合が自然消滅して活動実体を失った場合には、命令の拘束力は失われ、その取消しを求める訴えは訴えの利益を欠き却下される。救済命令は公法上の義務を課すものであり、組合に私法上の請求権を与えるものではないため、清算法人として存続していても支払…
事件番号: 昭和54(行ツ)85 / 裁判年月日: 昭和58年2月24日 / 結論: 棄却
夏季一時金の算定の基礎となる出勤率を計算する場合にストライキによる不就労を欠勤と扱うべきか否かについて労使間の合意や慣行は成立していなかつたが、組合がはじめてストライキを実施したところ、使用者は右ストライキによる不就労を通常の欠勤と同一に取り扱つたなど判示の事実関係のもとにおいては、使用者の右措置は労働組合法七条一号の…