判旨
公務員に発生した傷害が、職務に関連し、かつ公務に起因するものと認められる場合には、当該傷害に公務起因性が認められる。
問題の所在(論点)
公務員に生じた傷害について、国家補償や災害補償の前提となる「公務起因性」が認められるための要件および判断枠組みが問題となる。
規範
災害(傷害等)の公務起因性が認められるためには、当該災害が職務の遂行に起因して発生したこと、すなわち、職務と災害との間に相当因果関係が認められることを要する。判断にあたっては、職務遂行性(職務に従事している状態)を前提としつつ、職務に内在する危険が具現化したものといえるか否かを検討すべきである。
重要事実
上告人(国側)に対し、被上告人(公務員)が公務中に発生した傷害について公務起因性の有無を争った事案。原審は、被上告人に生じた本件傷害について、具体的な発生状況等の事実関係に基づき、公務との間に因果関係があるものと認定した。これに対し、上告人が事実誤認や違法を主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、原審が認定した事実関係(詳細は判決文からは不明だが、傷害の発生状況等)に照らせば、被上告人の傷害は公務に起因するものと判断した原審の結論を正当として是認した。これは、職務執行と傷害発生との間に密接な関連性があり、公務に伴う危険が現実化したものと評価できる事実関係が存在したことを前提としている。
結論
被上告人の本件傷害には公務起因性が認められ、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、具体的な判断基準を詳述していないが、原審の公務起因性の認定を維持している。答案上は、公務員災害の事案において、職務遂行性(時空的・施設的関連性)と職務起因性(職務と災害の相当因果関係)の二段階で検討する際、事実関係から「職務に内在する危険が具現化した」と評価できる場合に公務起因性を肯定する根拠として活用できる。
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