判旨
業務上の疾病に該当するか否かの判断において、業務と発症との間に相当因果関係が認められる場合には、労働基準法上の災害として認められる。
問題の所在(論点)
労働者が発症した高血圧性脳出血について、業務との間に相当因果関係を認め、業務上の疾病(労働基準法上の災害)に当たると判断できるか。
規範
業務上の疾病として認められるためには、業務と疾病の発症との間に相当因果関係が存在することが必要である。
重要事実
上告人の従業員であったAは、高血圧性脳出血を発症した。原審において、当該疾患の発症とAが従事していた業務との間には、その内容や負担に照らして相当因果関係が認められると判断された。上告人はこの因果関係の存否を争い、上告を申し立てた。
あてはめ
原審が確定した事実関係によれば、Aの業務内容や労働環境から生じる負荷が、高血圧性脳出血という結果を招く程度の過重性を有していたと評価される。判決文からは具体的な業務時間の詳細は不明であるが、原審が挙げた証拠関係に基づき、業務と発症の間に論理的な結びつき(相当因果関係)が肯定されている以上、その判断は是認されるべきである。
結論
Aの高血圧性脳出血の発症と業務との間には相当因果関係が認められるため、本件は業務上の疾病に該当する。
実務上の射程
脳・心臓疾患等の過労死事案において、業務の過重性と発症との間の相当因果関係の有無が判断の分水嶺となることを示す。答案上では、具体的態様(労働時間、精神的・肉体的負荷等)を指摘した上で、本判例を引用して相当因果関係の成否を論じる際の論拠となる。
事件番号: 平成12(行ヒ)320 / 裁判年月日: 平成16年9月7日
【結論(判旨の要点)】労働者が基礎疾患を有していた場合であっても、業務が客観的にみて特に過重であり、それが基礎疾患を自然の経過を超えて急激に悪化させたと認められるときは、業務と疾病との間に相当因果関係が認められる。 第1 事案の概要:貿易会社の営業員である上告人(当時37歳)は、過去に十二指腸潰瘍の既往症があった。上告…
事件番号: 平成12(行ヒ)320 / 裁判年月日: 平成16年9月7日 / 結論: 破棄自判
ヘリコバクター・ピロリ菌感染という基礎疾患及び慢性十二指腸かいようの既往症を有する貿易会社の営業員が海外出張中にせん孔性十二指腸かいようを発症した場合につき,上記営業員が4日間にわたる国内出張後,重要な外国人顧客に同行して12日間に六つの国と地域を回り,休日もなく連日商談,接待等のため長時間の勤務を続けており,これによ…
事件番号: 平成7(行ツ)156 / 裁判年月日: 平成12年7月17日 / 結論: 破棄自判
支店長付きの運転手として自動車運転の業務に従事していた者が早朝支店長を迎えに行くため運転中くも膜下出血を発症した場合において、同人が右発症に至るまで相当長期間にわたり従事していた右業務は精神的緊張を伴う不規則なものであり、その労働密度は決して低くはなく、右発症の約半年前以降は一日平均の時間外労働時間が七時間を上回り、一…
事件番号: 平成7(行ツ)156 / 裁判年月日: 平成12年7月17日
【結論(判旨の要点)】労働者が脳動脈瘤等の基礎疾患を有していたとしても、業務による過重な精神的・身体的負荷が当該疾患を自然の経過を超えて増悪させ、くも膜下出血を発症させた場合には、業務と発症との間に相当因果関係が認められ、業務上の疾病に当たる。 第1 事案の概要:支店長専属運転手として勤務していた上告人(54歳)が、走…
事件番号: 平成6(行ツ)200 / 裁判年月日: 平成9年4月25日 / 結論: 破棄自判
配電工が、業務に従事中に、クレーンのワイヤーが切れ、ワイヤー、フック、電柱等の重量物が地上約三メートルの高さから付近に落下し、顔面に軽度の負傷をするという事故に遭った日の二日後に、非外傷性の脳血管疾患を発症し、その翌日に死亡した場合において、右配電工は、右発症の基礎となり得る素因又は疾患を有していたことは否定し難いが、…