判旨
禁錮以上の刑に処せられた地方公務員を当然に失職させ、かつ退職手当を全額支給しない制度は、公務に対する住民の信頼確保という目的に照らし、憲法13条、14条1項、29条に違反しない。
問題の所在(論点)
禁錮以上の刑に処せられた地方公務員を当然失職させ(地方公務員法28条4項等)、退職手当を不支給とする(条例6条1項2号)ことが、憲法13条、14条1項、29条に違反するか。
規範
地方公務員の地位の特殊性や職務の公共性に鑑み、公務に対する住民の信頼を確保する目的から、禁錮以上の刑に処せられたことを理由とする失職や退職手当の支給制限を行うことは、その目的に合理性があり、かつ手段が目的に対して必要かつ合理的な範囲内であれば、憲法13条、14条1項、29条に違反しない。
重要事実
香川県職員であった上告人は、禁錮以上の刑に処せられた。これに対し、地方公務員法28条4項、16条2号に基づき当然失職とされ、さらに香川県職員退職手当条例6条1項2号に基づき退職手当の全額不支給処分を受けた。上告人は、これらの規定が私企業労働者との比較において不当な差別であり、幸福追求権、平等権、財産権を侵害するとして争った。
あてはめ
まず、当然失職については、公務員は全体の奉仕者(憲法15条2項)であり信用失墜行為禁止義務(地公法33条)を負う。禁錮以上の刑に処せられた者が公務に従事し続けることは住民の信頼を損なうため、排除の目的は合理的であり、私企業労働者との差異も地位の特殊性から正当化される。次に、退職手当不支給についても、手当が勤続報償的性格を有することから、禁錮以上の刑に処せられた者を「公務への貢献を行わなかった者」とみなして支給制限することは、退職手当制度の適正な運用と住民の信頼確保の観点から必要かつ合理的である。
結論
地方公務員法28条4項、16条2号、および本件条例の規定は、憲法13条、14条1項、29条1項に違反しない。
実務上の射程
公務員の身分喪失や経済的不利益を伴う制裁的規定の合憲性判断において、公務員の「地位の特殊性」や「住民の信頼確保」という目的を重視する判例である。退職手当の性質(後払的賃金か勤続報償か)に触れつつ、裁量の合理性を肯定する際の論拠として有用である。
事件番号: 昭和62(行ツ)119 / 裁判年月日: 平成元年1月17日 / 結論: 棄却
地方公務員法二八条四項、一六条二号は、憲法一三条、一四条一項に違反しない。
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。