判旨
労働者災害補償保険法に基づく不支給処分の取消訴訟において、事業主はメリット制による保険料増額の可能性がある場合に限り、被告を補助するための「法律上の利害関係」(民訴法42条)を有する。
問題の所在(論点)
労災保険給付の不支給決定取消訴訟において、当該労働者の事業主は、行政事件訴訟法23条2項(民事訴訟法42条の例による)にいう補助参加の利益(法律上の利害関係)を有するか。
規範
1. 補助参加が認められるための「訴訟の結果について利害関係を有する」とは、当該訴訟の判決が参加人の法的地位に対し直接又は間接に不利益な影響を及ぼすおそれがある場合を指す。 2. 労災不支給決定の取消訴訟において、取消判決による支給決定の確定が、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(徴収法)12条3項所定のメリット制に基づき、次々年度以降の保険料増額を招く可能性があるときは、当該事業主は「法律上の利害関係」を有する。
重要事実
抗告人の工場に勤務していた労働者Aの死亡に関し、Aの妻(相手方)が遺族補償給付等の不支給処分の取消しを求めて行政訴訟を提起した。抗告人(会社)は、①本案訴訟で業務起因性が認められると将来の損害賠償請求訴訟で不利益を受ける可能性があること、②メリット制により将来の保険料が増額される可能性があることを理由に、処分行政庁を補助するため参加を申し出た。原審はこれを却下したため、抗告人が許可抗告を申し立てた。
あてはめ
1. 損害賠償請求等への影響:労災給付がなされれば使用者は労基法上の災害補償責任を免れる(労基法84条)ため、本案での行政側敗訴はむしろ有利に働く。また、安全配慮義務違反の成否は審判対象が異なり、判決理由中の判断に事実上の影響を受けるにすぎないため、利害関係は否定される。 2. 保険料増額の可能性:徴収法12条3項のメリット制が適用される一定規模以上の事業主については、取消判決の拘束力(行訴法33条)により支給決定がなされると、次々年度以降の保険料が増額される法的リスクが生じる。この点については、行政側の敗訴を防ぐことにつき法律上の利害関係が認められる。
結論
事業主の工場が徴収法12条3項所定の一定規模以上の事業に該当する場合には、補助参加の利益が認められる。原決定を破棄し、当該要件の充足につき審理させるため差し戻す。
事件番号: 平成12(行フ)3 / 裁判年月日: 平成13年2月22日 / 結論: 破棄差戻
労働者災害補償保険法に基づく保険給付の不支給決定取消訴訟において,事業主は,その事業が労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項各号所定の一定規模以上の事業である場合には,労働基準監督署長を補助するため訴訟に参加することが許される。
実務上の射程
行政訴訟における補助参加の範囲を画した重要判決である。答案上は「反射的利益」や「事実上の利害」に留まらない法的影響を論証する際、本判決が「メリット制による保険料増額」という経済的不利益を法的利害として構成した点を重視すべきである。損害賠償請求への波及については否定されている点に注意を要する。
事件番号: 平成13(行ニ)5 / 裁判年月日: 平成14年9月26日 / 結論: 却下
自ら救済を申し立てなかった労働者がその所属する労働組合の救済申立てに係る救済命令の取消訴訟に行政事件訴訟法22条1項に基づく参加をすることは,当該救済命令の内容が当該労働者に対する賃金相当額の支払を命じるものであるなど当該労働者個人の雇用関係上の権利にかかわるものであっても,許されない。
事件番号: 平成12(許)17 / 裁判年月日: 平成13年1月30日 / 結論: 破棄自判
取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において,株式会社は,特段の事情がない限り,取締役を補助するため訴訟に参加することが許される。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成4(行ツ)119 / 裁判年月日: 平成7年2月23日 / 結論: 却下
高等裁判所が補助参加の許否に関する裁判を判決の形式で行った場合には、右判決に対する上告についての最高裁判所の審理の対象は、民訴法四一九条ノ二所定の抗告理由の有無の範囲に限られる。
事件番号: 平成14(行フ)7 / 裁判年月日: 平成15年1月24日 / 結論: その他
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(平成9年法律第85号による改正前のもの)15条1項に基づいてされた廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成9年政令第353号による改正前のもの)7条14号ハ所定の産業廃棄物のいわゆる管理型最終処分場の設置許可申請に対する知事の不許可処分の取消訴訟において,当該施設の周辺に居住し,当…