判旨
任命権者が特定の組合を嫌悪・差別する意思を有し、組合の分裂を助長・支援する等の支配介入を行った場合、当該組合に対する不法行為が成立する。一方で、組合員個人に対する昇任・昇格等の差別を理由とする国家賠償請求には、裁量権の濫用を基礎づける個別具体的な立証が必要である。
問題の所在(論点)
1. 任命権者が特定の組合を嫌悪し、その分裂を助長した行為は、当該組合に対する不法行為となるか。 2. 集団的にみて昇任等の格差が存在する場合、それだけで組合員個人に対する裁量権の濫用による不法行為が成立するか。
規範
1. 公務員の昇任、昇格及び昇給は、任命権者の裁量に委ねられており、特定の組合員が不当な差別的取扱いを受けたと主張して国家賠償を請求する場合、勤務実績や能力等に差がないことが個別的、具体的に立証され、裁量権の逸脱・濫用が認められなければならない。 2. 当局が、特定の職員団体を嫌悪し、その組織の弱体化や分裂を意図して、職制を通じた脱退勧誘の助長や支配介入を行った場合には、当該団体に対する不法行為(団結権の侵害)を構成する。
重要事実
東京税関の職員ら(個人原告)及び所属組合(原告組合)が、当局から組合員であることを理由に昇任・昇給で差別され、また、当局の支配介入により組合が分裂・弱体化させられたとして、国家賠償法1条1項に基づき提訴した。事実認定として、当局が職制を中心とした分裂の動きを助長・支援したこと、新入職員の加入制限やサークル活動への差別等、原告組合を嫌悪・差別する意思を有していたことが認められた。他方で、個人原告らについては、非違行為による矯正措置や病気休暇等の個別的事情が存在していた。
あてはめ
1. 組合に対する関係:関税局や東京税関当局が原告組合を嫌悪し、差別する意思を有していたことは、当局の内部文書等から認められる。具体的に、職制を用いた分裂の助長、ビラ回収による加入妨害、特定派出所への隔離、音楽隊の解散余儀なきに至る差別等は、組合に対する支配介入であり、団結権を侵害する不法行為にあたる。 2. 組合員個人に対する関係:統計上、原告組合員が非原告組合員に比して低位に処遇されている事実はある。しかし、昇任等は任命権者の裁量事項である。本件では、個人原告らに非違行為や病気休暇等の個別的マイナス要因があり、同期の非組合員と格差がない者もいた。したがって、勤務実績や能力に差がないことの個別具体的な立証がなされたとはいえず、裁量権の濫用は認められない。
結論
1. 原告組合に対する支配介入による無形の損害(慰謝料等)の賠償請求を認容する。 2. 個人原告らによる、昇任・昇格等の差別を理由とする損害賠償請求は棄却する。
実務上の射程
当局による組織的な「組合差別」や「支配介入」が認定された場合でも、公務員の昇任・昇格に関しては任命権者の広範な裁量が維持される。答案上、組合という「団体」への不法行為と、「個人」に対する処遇の差別を分けて論じる必要がある。特に個人については、単なる統計的な格差(集団間の比較)だけでは足りず、比較対象者との能力・実績の同等性を具体的に立証する必要があることを示す際に有用である。
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