市が既に取得していた隣接地と一体のものとして事業の用に供するため,土地開発公社の取得した土地をその簿価に基づき正常価格の約1.35倍の価格で買い取る売買契約を締結した市長の判断は,①上記隣接地の取得価格は,近隣土地の分譲価格等を参考にして定められたものであり,相応の合理性を有するものであったこと,②上記売買契約に係る土地の1㎡当たりの取得価格は,上記隣接地の1㎡当たりの取得価格を下回るものであり,これを地価変動率で上記売買契約締結当時のものに引き直した価格をも下回るものであったことなど判示の事情の下では,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法となるとはいえない。 正常価格:市場性を有する不動産について,現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格
市が土地開発公社の取得した土地をその簿価に基づき正常価格の約1.35倍の価格で買い取る売買契約を締結した市長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法となるとはいえないとされた事例
地方自治法2条14項,地方自治法242条の2第1項4号,地方財政法4条1項
判旨
地方公共団体が土地開発公社から正常価格を超える価格で土地を買い取る行為は、取得価格決定の過程に一定の算定根拠があり、近隣の取引価格等に照らし相応の合理性を有する場合には、直ちに裁量権の逸脱・濫用として違法となるものではない。
問題の所在(論点)
地方公共団体が土地開発公社から土地を買い取るに際し、正常価格を約35%上回る価格を設定したことが、財務会計上の裁量権を逸脱・濫用した違法な行為にあたるか。
規範
地方公共団体が土地を正常価格(適正な市場価値)に比して高額な対価で取得することは、原則として地方自治法2条14項等の趣旨に照らし違法となり得る。しかし、取得価格が正常価格を超えるからといって直ちに違法とはならず、①購入の必要性、②土地の代替可能性、③交渉経過、④取得価格決定の算定根拠や合理性を総合考慮し、市長の判断が裁量権の範囲を逸脱・濫用したといえるか否かによって判断すべきである。
事件番号: 平成23(行ヒ)452 / 裁判年月日: 平成25年3月28日 / 結論: 破棄差戻
広域連合がし尿及び浄化槽汚泥の積替え保管施設等の用地として土地を賃借する契約につき,上記用地を確保するため当該土地を賃借する必要性,上記施設の性質に伴う用地確保の緊急性や困難性といった事情について十分に考慮することなく,当該契約において鑑定評価を経ずに定められた賃料額が私的鑑定において適正とされた賃料額と比較して高額で…
重要事実
大洲市は、図書館建設のため、土地開発公社が先行取得していた本件土地を約6,586万円(1㎡当たり7.24万円)で買い取った。この価格は、公社が保有する保留地全体の簿価に基づき算出されたもので、鑑定評価は実施されていなかった。本件土地の当時の正常価格は約4,867万円(1㎡当たり5.35万円)であり、取得価格は正常価格の約1.35倍であった。住民側は、この高額買取りが違法であるとして損害賠償を求めた。
あてはめ
まず、本件価格(1㎡当たり7.24万円)は、先行して取得した隣接地の単価(8.47万円)や、それを当時の地価下落率で補正した価格(7.56万円)を下回っており、近隣相場との比較において特に高額とはいえない。次に、価格決定の基礎となった「簿価」は、公社が実際に要した用地費に支払利息等を加えたものであり、一定の算定根拠を有する。正常価格との1.35倍という較差も、隣接地の取得経緯等に照らせば顕著な相違とはいえず、不動産鑑定を経ていないことを考慮しても、明らかに合理性を欠くものとはいえない。
結論
本件売買契約における市長の判断は、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとは認められず、財務会計法規上、適法である。したがって、賠償請求は棄却される。
実務上の射程
本判決は、土地開発公社からの「簿価」による買い戻しについて、市場価格(正常価格)との乖離のみをもって直ちに違法とするのではなく、先行取得の経緯や近隣価格との比較を通じた「価格の相対的な合理性」を重視する枠組みを示した。答案上は、正常価格との乖離がある事案でも、算定根拠の有無や他の比較対象(隣接地単価等)を用いて裁量逸脱を否定する論法として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)686 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
合意解除に基づく不当利得返還請求において、合意解除について当事者間に争いがあるのにかかわらず争いのないものと誤認した違法があつても、判示事情のもとにおいては、判決に影響を及ぼすものとはいえない。
事件番号: 平成29(行ヒ)226 / 裁判年月日: 平成30年11月6日 / 結論: 破棄自判
1 普通地方公共団体の財産の譲渡又は貸付けが適正な対価によるものであるとして議会に提出された議案を可決する議決がされた場合であっても,当該譲渡等の対価に加えてそれが適正であるか否かを判定するために参照すべき価格が提示され,両者の間に大きなかい離があることを踏まえつつ当該譲渡等を行う必要性と妥当性について審議がされた上で…
事件番号: 令和4(行ヒ)317 / 裁判年月日: 令和5年12月12日 / 結論: 破棄自判
1 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条所定の政務活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。 2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議…