売掛代金債権の存在を判定するに当つては、必ずしも、逐一その売買品目、単価等を明示することを要するものでなく、当該債権を他の債権から区別しうる程度の事実を確定すれば足りる。
売掛代金債権の存在を判定するに当り確定することを要する事実。
民法555条,民訴法395条6号
判旨
売買代金請求訴訟等の請求原因において、売買品目や単価が特定されていなくとも、目的物の種類、日時、代金合計額が確定され、他の債権から区別できる程度の事実が示されていれば、債権は特定されたものと解すべきである。
問題の所在(論点)
訴訟物たる債権を特定するために、売買契約の目的物の数量や単価までを詳細に摘示・確定する必要があるか。請求原因における事実の特定の程度が問題となる。
規範
売掛代金債権の存在を判定するに際しては、必ずしも逐一その売買品目や単価等を明示することを要しない。当該債権を他の債権から区別しうる程度の事実(識別可能性)が確定されていれば、特定として足りる。
重要事実
上告人と被上告人の間の売買代金請求に関し、原審は売買の目的物が「ラジオ」であること、取引の「日時」、および「代金合計額」を確定した。しかし、個別の数量や単価については具体的に特定していなかったため、上告人は債権が特定されていないとして違法を主張した。
あてはめ
本件では、原審において目的物がラジオであること、取引の日時、代金合計額という要素が確定されている。これらの要素が組み合わさることで、本件売掛代金債権関係を当事者間の他の債権関係から区別することが可能となっている。したがって、数量や単価が不明であっても、他の債権との識別可能性は確保されているといえる。
結論
債権を他の債権から区別しうる程度の事実が確定されていれば足り、本件の原判決に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
訴状の記載や要件事実の整理において、詳細な内訳(数量・単価等)が不明な場合でも、日時や総額等により他の契約と混同しない程度に特定されていれば、請求を適法として維持できる。実務上、大量の取引が継続している事案での特定基準として機能する。
事件番号: 昭和32(オ)948 / 裁判年月日: 昭和36年4月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が提出した証拠や口頭弁論の全趣旨に照らし、主張の真意を合理的に解釈して請求原因を特定することは、裁判所の適切な事実認定の範囲内である。証拠の取捨選択や事実認定は原則として原審の裁量に属し、経験則違反等の特段の事情がない限り適法とされる。 第1 事案の概要:被上告会社(原告)は、訴外会社との全…