判旨
当事者双方が特定の取引の存在を認めている場合であっても、その取引の日時、数量、単価等の主要な事実について主張が一致しないときは、一致しない部分について裁判上の自白は成立しない。
問題の所在(論点)
当事者双方が特定の売買取引があったこと自体は認めているが、その具体的な日時、数量、単価、代金額等の主張が食い違っている場合、その詳細な部分について自白が成立したといえるか(不要証事実となるか)。
規範
裁判上の自白(民訴法179条参照)が成立するためには、相手方の主張する事実と自己の陳述が一致することを要する。取引の存否といった概括的な事実のみならず、日時、目的物、数量、単価、代金額等の契約を特定する主要な要素について主張の合致が認められない限り、その不一致部分について自白は成立せず、裁判所は証拠に基づき事実を認定することができる。
重要事実
上告人(売主)は、昭和25年10月13日に純毛背広地4本(代金26万6446円)、同月17日に同2本(代金13万2750円)を売渡したと主張した。これに対し、被上告人(買主)は、その頃純毛背広地5本を代金32万3580円位で買い受けたと陳述した。原審は、本件売買の目的物を「紡毛服地」と認定し、上告人の主張と一部異なる事実認定を行った。
あてはめ
上告人と被上告人の陳述を比較すると、同時期に服地の取引があった点では一致している。しかし、上告人が「2回の取引で計6本、合計約40万円」の売買を主張しているのに対し、被上告人は「1回の取引で5本、約32万円」の旨を陳述しており、取引の個数、数量、代金等の具体的内容において一致していない。したがって、一致しない「余の部分」については自白の成立を認めることはできず、裁判所がこれと異なる事実を認定しても、自白の拘束力に反する違法はない。
結論
取引の存否に関する概括的な一致があっても、具体的な契約内容の主要部分について主張が異なる以上、不一致部分に自白は成立しない。
実務上の射程
裁判上の自白の成立要件である「主張の一致」の厳格性を説く。取引の基本的事実のみならず、反対給付や数量といった主要事実に争いがある場合は、裁判所は自由な心証により事実認定が可能であることを示唆しており、弁論主義の適用範囲を画する際の基準となる。
事件番号: 昭和32(オ)661 / 裁判年月日: 昭和34年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原審の事実認定を争うことは、それが原審の専権に属する証拠の取捨および事実の認定に対する非難にすぎない場合、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人が、原審が認定した事実およびその基礎となった証拠の取捨選択の不当を理由として、最高裁判所に上告を提起した事案。判決文中に具体…