判旨
金銭消費貸借において、利息制限法の制限を超える利息を元金からあらかじめ控除するいわゆる利息の天引きが行われた場合、特段の事情がない限り、制限超過利息に相当する部分については金銭消費貸借は成立せず、実際に交付された金額を元本とみなすべきである。
問題の所在(論点)
利息制限法の制限を超える利息を元金から天引きして貸し付けた場合、天引きされた制限超過利息分を含めた全額について金銭消費貸借が成立するか。
規範
利息制限法の制限を超過する利息を前払として元金より控除した場合、他にこれを首肯せしめる合理的根拠(特段の事情)のない限り、制限超過部分については消費貸借の成立は認められない。したがって、制限超過利息に相当する額の元金交付はなかったものとして扱うべきである。
重要事実
上告人は被上告人から、元金40万円、利息月1割、期間1か月の約定で金銭を借り受けた。その際、被上告人は1か月分の利息に相当する4万円をあらかじめ元金から控除(天引き)し、残額36万円のみを上告人に交付した。被上告人は、40万円全額について消費貸借が成立していると主張し、本件手形金(40万円)の支払を求めた。
あてはめ
本件では、約定利息が月1割(年120%)であり、当時の利息制限法の制限を著しく超過している。消費貸借は要物契約(旧法下)としての性質を有するところ、天引きされた金額については現実に金銭の交付がなされていない。制限超過利息は裁判上無効とされるべきものであり、単に利息の前払という形式をとっていても、それを正当化する合理的根拠がない限り、交付なき部分に契約の効力を認めることはできない。したがって、特段の事情がない本件では、天引きされた4万円のうち制限超過分については消費貸借の成立を認めることはできない。
結論
制限超過利息の天引き部分について消費貸借の成立を認め、40万円全額の請求を認容した原判決には法令の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
利息の天引きが行われた場合の元本認定に関するリーディングケースである。現行利息制限法2条(みなし利息および天引きの規定)の趣旨を先取りする判断であり、実務上は、交付された実額を元本として、これに対する法定上限利率の範囲内で利息を再計算するという処理(引き直し計算)の基礎となる法理である。
事件番号: 昭和42(オ)967 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
一、債権者と債務者間に数口の貸金債権が存在し、弁済充当の順序について特約が存在する場合において、債務者が利息制限法所定の制限をこえる利息を支払つたときは、右超過部分に対する弁済は、右特約の趣旨に従つて次順位に充当されるべき債務で有効に存在するものに充当されるものと解すべきである。 (反対意見がある) 二、裁判所は、利息…