判旨
文書の写し(コピー)であることをもって、直ちにその証拠能力が否定されるものではなく、適法な証拠調べの手続を経ることで証拠として採用し得る。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、文書の「写し(コピー)」に証拠能力が認められるか。また、写しであることの一事をもって直ちに証拠能力を否定すべきか。
規範
文書の写しは、それが謄本や複写物であることを理由に直ちに証拠能力が否定されるわけではない。刑事訴訟法上の証拠能力の有無は、当該写しが作成された経緯や原本との同一性、伝聞例外(刑訴法320条以下)の要件充足性等を踏まえ、適法な証拠調べの手続を通じて判断されるべきものである。
重要事実
被告人Bは、極東軍犯罪検査試験所作成の「実験所報告写」が証拠として採用されたことに対し、写しであることを理由に証拠能力を否定すべきであるとして上告した。第一審の第1回公判において、当該報告の写しについて適法な証拠調べが既に行われていたという経緯があった。
あてはめ
本件における極東軍犯罪検査試験所作成の実験所報告の写しについて検討するに、被告人は写しである点のみを根拠に証拠能力を争うが、記録によれば、当該文書は第一審の初公判において既に適法な証拠調べの手続を経ている。文書が写しであっても、その成立の真正や内容の信憑性が手続上確認され、適法に証拠調べがなされた以上、写しであるという一事をもってその証拠能力を直ちに否定することはできない。
結論
文書の写しであっても、適法な証拠調べがなされたのであれば証拠能力は認められる。したがって、証拠能力を否定する被告人の主張は採用できない。
実務上の射程
伝聞法則が適用される書面について、原本が存在しない場合の「写し」の証拠能力に関する基礎的な判例である。実務上は、最良証拠の法則との関係で、原本の提出が困難な事情(滅失等)や原本との同一性の証明が求められるが、本判決は「写し=直ちに証拠能力否定」という形式的な判断を排している点に意義がある。
事件番号: 昭和27(あ)4279 / 裁判年月日: 昭和29年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において複数人が共同で作成した鑑定書は、その証明力が争われる場合であっても、証拠能力を認めることに妨げはない。 第1 事案の概要:被告人側は、第一審が証拠として採用した二名の鑑定人(DおよびE)による共同作成の鑑定書について、その証明力を争い、原審の事実認定に誤りがあると主張して上告した。…
事件番号: 昭和25(あ)2456 / 裁判年月日: 昭和27年3月25日 / 結論: 棄却
一 判決の証拠説明において証拠能力のない書面を挙げていても、それが他の証拠能力のある供述書に引用せられており、その内容を補足する趣旨のものに過ぎないときは、違法ではない。 二 右の場合、供述書の証拠調の方法としては、これを朗読する外引用せられた書面を朗読すれば足り、これを示す必要はない。