論旨は、刑罰法令が犯罪に對する制裁として懲役刑と罰金刑とを選擇的に科すべきことを定めた場合において、裁判所が當該事件の被告人に對して懲役刑を選擇して科するときにはその理由を明らかにしなければならないというのであるが、舊刑訴法第三六〇條その他の規定によるもかゝる理由を付しなければならないと解すべき法的根據はないのであるから、論旨は理由がない。
懲役刑と罰金刑とを選擇的に科する規定ある場合にその一つを選擇科刑する理由を明示することの要否
舊刑訴法360條1項
判旨
刑罰法令が犯罪の制裁として懲役刑と罰金刑を選択的に定めている場合、裁判所が懲役刑を選択するに当たってその理由を判決書に明示する必要はない。
問題の所在(論点)
刑罰法令において懲役刑と罰金刑が選択的に定められている場合、裁判所が懲役刑を選択するに際して、判決書にその選択の理由を付記する必要があるか(刑の選択理由の付記義務の有無)。
規範
刑罰法令が選択刑を定めている場合、裁判所がいずれの刑を選択したかという点は、裁判所の裁量に属する事項である。判決書において刑の選択の理由を記載すべきことを義務付ける法的根拠は、旧刑事訴訟法360条(現行法335条参照)等の規定を照らしても存在しない。
重要事実
被告人が犯した罪に対し、刑罰法令は懲役刑と罰金刑を選択的に科すべきことを定めていた。第一審または控訴審において、裁判所は被告人に対し懲役刑を選択して科したが、判決理由において、なぜ罰金刑ではなく懲役刑を選択したのかという具体的な理由については明示しなかった。これに対し、弁護人が理由不備の違法があるとして上告した事案である。
事件番号: 昭和25(れ)1840 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行刑事訴訟法405条等に相当)に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が上告を提起したが、その主たる理由は量刑が不当であるという点に尽きていた(具体的な犯罪事実は本判決文からは不明)。 第2 問題の所在(論点):量刑不…
あてはめ
旧刑事訴訟法360条(罪となるべき事実、証拠の標目および法令の適用を掲示すべきとする規定)を検討しても、選択刑のうち特定の刑を選択した理由までを判決書の必須記載事項とする規定は見当たらない。本件においても、裁判所が適法に懲役刑を選択した以上、その選択過程に関する具体的な理由が判決書に付されていないからといって、手続上の違法があるということはできない。
結論
裁判所が懲役刑を選択する際にその理由を明らかにする必要はないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
量刑不当や理由不備の主張に対する反論として機能する。司法試験の刑事訴訟法において、判決書の記載事項(現行刑訴法335条1項)の限界を問う問題が出題された際、刑の選択については事実認定や法令適用とは異なり、詳細な理由提示が不要であることの根拠として引用できる。ただし、現代の実務においては、重大な事件などで刑種選択が争点化している場合には、一定の説明がなされるのが通例であることに留意が必要。
事件番号: 昭和26(れ)835 / 裁判年月日: 昭和26年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意において判例違反を主張する場合には、規則に基づき、具体的な判例を示さなければならない。具体的な判例の提示がない場合、不適法な上告として棄却される。 第1 事案の概要:被告人Aおよび被告人Bの弁護人が、それぞれ原判決に判例違反があるとして上告を申し立てた。しかし、上告趣意書において、違反した…
事件番号: 昭和26(あ)3281 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決書に記載すべき検察官の氏名は、当該事件の審理または判決言渡しのいずれかに関与した検察官の氏名であれば、法的に必要十分である。 第1 事案の概要:被告人らは、粕取焼酎の製造等に関連する刑事事件において有罪判決を受け、上告した。上告趣意の中で、判決書に記載された検察官の氏名が適切でない旨の法令違反…
事件番号: 昭和26(れ)85 / 裁判年月日: 昭和26年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下における上告審において、量刑不当の主張は上告適法の理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が原判決の量刑を不服として上告を申し立てた事案。弁護人は、原判決の刑の量刑が重すぎる(量刑不当)ことを上告趣意として主張した。 第2 問題の所在(論点):旧刑事訴訟法および刑訴応急措置法の適…
事件番号: 昭和26(れ)382 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再上告の理由として、原判決において刑訴応急措置法17条所定の再上告理由を発見できないとする主張は、適法な再上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が、原上告審判決について刑訴応急措置法17条所定の再上告理由を発見できない旨を主張して再上告を申し立てた事案。 第2 問題の所在(論点):「再上…