判旨
商業登記簿の記載事項は、反証によって覆し得る事実上の推定力を有するにとどまり、裁判所を拘束する法的効力を有するものではない。
問題の所在(論点)
商業登記簿の記載には、裁判所の事実認定を拘束するような証拠上の効力が認められるか。換言すれば、登記の記載事項に反する事実認定が許されるかが問題となる。
規範
商業登記簿の記載は、実体的な権利関係を確定させる法的効力を有するものではなく、単に事実上の推定力を有するにとどまる。したがって、裁判所は、他の証拠に基づき登記の記載と異なる事実を認定することが妨げられない。
重要事実
上告人は、商業登記簿(甲2号証)の記載内容と異なる事実認定を行った原審の判断には違法があるとして上告した。原審は、証拠の取捨選択の結果、登記簿に記載された事項とは符合しない実体的な事実関係を認定していた。
あてはめ
本件において、原審は挙示された各証拠を検討し、登記簿謄本の記載内容に反する事実を認定している。しかし、登記簿の記載に認められるのは事実上の推定力にすぎないため、裁判所が自由心証に基づき、登記内容と異なる実体関係を認定することは適法である。原審の証拠の取捨判断および事実認定は、その専権に属する事項であり、違法とはいえない。
結論
商業登記簿の記載には事実上の推定力しか認められないため、これと異なる事実を認定した原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
登記の公信力が否定される現行法下において、登記の証明力的価値を端的に示した判例である。答案上は、登記の不実記載や表見責任(商法9条、旧商法14条等)を論じる際、前提として『登記は事実上の推定力にすぎないため反証が可能である』ことを示す文脈で使用できる。
事件番号: 昭和32(オ)180 / 裁判年月日: 昭和33年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告の理由が原審の事実認定や証拠の取捨選択を非難するものにすぎない場合、原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が行った証拠の取捨および事実の認定に不服があるとして上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):事実認定の不当を理…