判旨
強制執行停止のために供すべき保証の額は、必ずしも執行対象物の価格全額であることを要しない。また、単なる法律解釈の誤りを前提に憲法違反を主張することは、適法な再抗告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
強制執行を停止するための保証額は、執行対象物の価格全額でなければならないか。また、単なる法律誤認の主張をもって、適法な再抗告理由としての憲法違反の主張といえるか。
規範
強制執行停止の申立てにおいて裁判所が命じる保証の額は、必ずしも執行対象物の価格の全額である必要はなく、裁判所の裁量により決定される。また、再抗告理由としての憲法違反の主張は、単なる法律解釈の誤りや経験則違反を主張するにとどまる場合は不適法である。
重要事実
抗告人とDとの間の強制執行手続において、相手方が第三者異議の訴えを提起し、これに基づいて執行停止を求めた。原審は執行停止を認めるに際し、一定の保証額を定めたが、抗告人はこの保証額が執行対象物の価格全額に達していないことや、執行停止を認め得ること自体に法律上の誤り(経験則違反等)があるとして、憲法違反を理由に再抗告を申し立てた。
あてはめ
まず、強制執行停止の保証額について、法は必ずしも執行対象物の価格全額を積ませることを要求しておらず、原審が決定した保証額に経験則違反等の違法は認められない。次に、第三者異議の訴えに基づく執行停止の可否についても、原決定の判断に何ら違法はない。抗告人の主張は、結局のところ民事訴訟法の解釈を誤り、原決定に違法があるとするものであり、これを基礎として憲法違反を強弁するにすぎない。
結論
本件再抗告は、実質的に単なる法律誤認を主張するものであり、適法な再抗告理由としての憲法違反の主張に該当しないため、不適法として却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和23(ク)5 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えに伴う強制執行停止決定の効力は本案の第一審判決言渡により当然に消滅し、判決における停止決定取消の裁判及び仮執行宣言は既往の効力消滅を表明するに過ぎない。したがって、控訴提起を理由とする仮執行宣言付裁判の執行停止(旧民訴法512条等)を求める申請は原則として無意義であるが、実務上は新…
執行停止の保証額が裁判所の広範な裁量に属することを認めた実務上重要な判断である。答案上は、民事訴訟法(現行民訴法327条等)における再抗告理由の限定や、執行停止(民事執行法36条等)における保証額の算定基準を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(ク)3 / 裁判年月日: 昭和24年2月11日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法上特に許容されている場合を除き、申し立てることができない。法律の根拠を欠く最高裁判所への抗告は不適法であり、却下されるべきである。 第1 事案の概要:抗告人は、訴訟法上の具体的な根拠規定に基づかずに、最高裁判所に対して抗告を申し立てた。なお、具体的にどのような原決定…
事件番号: 昭和24(ク)21 / 裁判年月日: 昭和24年9月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法等の法令において特に最高裁判所への申し立てが許容されている場合に限り認められ、これに該当しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人らが最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、当該抗告が法律の規定により最高裁判所に申し立てることが特に許容された類型に該当す…
事件番号: 昭和24(ク)10 / 裁判年月日: 昭和24年3月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合を除いてはすることができず、憲法判断の不当を理由としないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対し抗告を申し立てた事案。抗告申立書の内容を精査したところ、原決定における憲法上の判断が不当であること…
事件番号: 昭和25(ク)57 / 裁判年月日: 昭和25年7月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、原決定に憲法違反の判断が含まれる場合に限られ、通常の再抗告規定は適用されない。 第1 事案の概要:抗告人等が、下級審の決定に対して最高裁判所へ抗告を申し立てた事案。抗告状の記載によれば、その抗告理由は原決定における憲法適合性の判断を不当とするも…