判旨
被告人が公判で事実を認め、強制や拷問の主張を一度も行わずに上告審で初めてこれを主張する場合、原審が特段の判断を示さなかったとしても違憲や審理不尽の違法はない。
問題の所在(論点)
事実審で一度も主張されず、客観的資料も乏しい状況で、上告審において初めて主張された「自白の強制・拷問」の事由に基づき、原判決に審理不尽や採証法則違反の違法が認められるか。
規範
上告審において初めて強制、拷問、脅迫等の事実を主張する場合であっても、一審および控訴審の公判廷で被告人が事実を自認し、弁護人も含めて一貫して不当な取り調べの事実を争わず、かつ客観的資料によりその事実が認められないときは、原判決に憲法違反や審理不尽の違法は認められない。
重要事実
被告人は、昭和23年に玄小麦の輸送に関わる事案で起訴された。第一審および控訴審において、被告人は公判廷で事実を自認し、何ら争わなかった。被告人および弁護人は、第一審から控訴審に至るまで、警察官による強制、拷問、脅迫があったことを一度も主張していなかった。しかし、上告審に至って、被告人作成名義の「拷問顛末書」を提出し、逮捕後に警察官から深夜に及ぶ尋問や証拠物の押収を強制されたとして、原判決の違法を主張した。
あてはめ
被告人は第一審および控訴審で自ら事実を認めており、当時の弁護人も強制等の事実を指摘していない。上告審で提出された被告人作成の書面以外に、逮捕手続書や押収調書などの客観的資料からは拷問等の事実は認められない。また、弁護人からも証拠調べの請求がなされていなかった以上、原審が特段の審理を行わず判断を示さなかったことは正当であり、経験則に反する点や審理不尽の違法はないといえる。
結論
本件上告は棄却される。一審・控訴審で争われず資料もない強制等の主張を上告審で初めて行っても、原判決に違憲等の違法は認められない。
事件番号: 昭和27(あ)4996 / 裁判年月日: 昭和28年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】物価統制令違反の事案において、第一審が認定した事実に対し同令を適用したことは適法であり、刑訴法411条を適用して原判決を破棄すべき事由も認められない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cが物価統制令違反の罪に問われた事案である。第一審および控訴審において有罪判決が下されたが、被告人側は量刑不当また…
実務上の射程
自白の任意性に関する主張の適時性を示す。事実審で争わず自白を維持した場合には、上告審で任意性を争うことが困難であることを示唆しており、公判廷での供述経過が重視される。
事件番号: 昭和26(れ)1174 / 裁判年月日: 昭和26年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項に基づき、上告適法の理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪の量刑が重すぎるとして、弁護人が上告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):量刑不当の主張が、法的に適法な上告理由として認められるか。 第3 規範:上告審において量…
事件番号: 昭和26(れ)973 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認や量刑不当の主張は、刑事訴訟法上の適法な上告理由に当たらない。また、職権による判決破棄事由が認められない限り、上告は棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人Aおよび弁護人は、第一審・控訴審の判断に対し、事実誤認および量刑不当を理由として上告を申し立てた。弁護人は憲法違反も主張してい…
事件番号: 昭和26(れ)683 / 裁判年月日: 昭和26年11月30日 / 結論: 棄却
原判決が、判示第六の犯罪事実認定の証拠として、被告人の原審並に第一審公判における自白の外、Aに対する司法警察官の聴取書を掲げたのは、これを以て右被告人の自白を補強するためであつて、右聴取書におけるAの供述がその内容の全部に亘つて、右被告人の自白と符合するものではないとしても、少くとも、その外形的事実―例えば同人が自転車…
事件番号: 昭和25(あ)2996 / 裁判年月日: 昭和26年12月13日 / 結論: 棄却
第一審判決は、正犯の公訴事実に対し幇助として事実認定をすると共に、さらに正犯について無罪である旨を理由中において説示しているのは、所論のように「無罪と判断した公訴事実に対して重ねて有罪を認定している」のではなく、公訴事実そのまゝの正犯は成立しないが幇助罪は成立するという趣旨を言い現わしたものに過ぎない。従つて、本件にお…