証人の供述は事実審たる原審において自由なる心証により採否を決し得べきものであつて、被害者の証言であるからとて其証言の真実性を裏付ける他の補強証拠がなければその証言のみによつて犯罪事実を認定することができない理由はない。
被害者たる証人の供述と補強証拠の要否
刑訴法318条,刑訴法304条
判旨
被害者の供述は、自由心証主義に基づき事実審が採否を決定すべきものであり、補強証拠がなくとも、当該証言のみによって犯罪事実を認定することが可能である。
問題の所在(論点)
刑事訴訟において、被害者の証言のみに基づいて犯罪事実を認定できるか。また、自白以外の証拠(被害者証言等)に補強証拠が必要とされるか。
規範
証拠の証明力の評価は、裁判官の自由な心証に委ねられる(自由心証主義)。被害者の証言についても、その真実性を裏付ける他の補強証拠がなければ犯罪事実を認定できないという制約はなく、当該証言の採否は事実審の裁量に属する。
重要事実
被告人が、被害者の供述のみに基づいて犯罪事実を認定したことは憲法違反である、あるいは証拠の評価に誤りがあるとして上告した事案。原判決では、被害者の証言に加えて、その他の証拠を総合して犯罪事実を認定していた。
あてはめ
証人の供述の採否は事実審の自由な心証によって決せられるべきものである。本件において、被害者の証言だからといって、その真実性を裏付ける補強証拠がなければ認定できないという法的理由は存在しない。さらに、原審は被害者の証言だけでなく、他の各証拠を総合して事実を認定しており、唯一の証拠として依拠したわけでもない。したがって、証拠評価に違憲や違法な点は認められない。
結論
被害者の証言のみによって犯罪事実を認定することは法的に可能であり、原審の証拠評価に違憲・違法はないため、上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法319条2項の補強法則は「被告人の自白」に限定されることを再確認する趣旨で用いられる。被害者供述の信用性判断が争点となる事案において、補強証拠の存否ではなく、自由心証主義(318条)の枠組みで信用性を論じるべき根拠となる。
事件番号: 昭和24(れ)282 / 裁判年月日: 昭和24年5月17日 / 結論: 棄却
被害者が錯誤に陥つた精神状態の認定をなすには必ず被害者の供述又は他の證據によらなければならないという理由はなく、加害者たる被告人の供述其他の證據によつてこれを認定したとしても採證法則に違背するものではない。