判旨
起訴状に記載された罰条が誤記であっても、起訴状冒頭に正しい対象事件が明示され、単なる数字の書き間違いに過ぎない場合には、起訴の効力を妨げるような法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
起訴状において適用罰条(刑訴法256条3項)を誤って記載した場合に、公訴提起の手続に無効あるいは取消しとなるような重大な法令違反が認められるか。
規範
起訴状における罰条の記載に誤りがあったとしても、起訴状全体の記載から対象となる事件が特定されており、かつ、その誤りが明白な誤記に過ぎない場合には、被告人の防御に実質的な不利益を与えない限り、公訴提起の手続が違法となることはない。
重要事実
被告人が昭和22年政令第165号違反の罪で公訴を提起された際、起訴状の冒頭には「昭和22年政令第165号違反被告事件」と正しく明記されていた。しかし、適用すべき罰条を記載する欄において、本来「第165号」と記載すべきところを「第16号」と誤って記載した状態で公判が請求された。
あてはめ
本件では、起訴状の冒頭部分に正しい対象事件名が明示されている。罰条欄における「第16号」という記載は、この冒頭の記載と照らし合わせれば「第165号」の単なる数字の誤記であることは明白である。したがって、被告人にとって審判の対象が不明確になることはなく、防御上の不利益も生じないため、法的な欠陥があるとはいえない。
結論
罰条の記載に誤記があっても、起訴状全体から事件が特定されていれば法令違反とはならず、上告は棄却される。
実務上の射程
訴因の特定(刑訴法256条3項)に関する判例であり、罰条の誤記が直ちに公訴棄却(338条4号)につながるわけではないことを示している。答案上は、訴因の特定の程度を論じる際や、被告人の防御権侵害の有無を検討する際の補助的な論理として活用できる。ただし、本件は軽微な誤記に関する判断であり、実質的に罪名が変わるような重大な誤記載の場合には慎重な検討を要する。
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事件番号: 昭和25(あ)3420 / 裁判年月日: 昭和26年11月8日 / 結論: 棄却
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