同種の物品についての意匠の類否の判定にあたり、それら物品の性質上、同法上当然具有すべき基本形状であつても、それが意匠を構成する主要部分になつている以上、その部分を除外して考察すべきものではない。
物品の基本形状が意匠の主要部を構成する場合における意匠の類否判定
旧意匠法(大正10年法律第98号)3条,旧意匠法(大正10年法律第98号)17条
判旨
意匠の類否判断において、物品の機能上必要な形状であっても、その構成が意匠の主要部分をなす場合は比較の対象から除外すべきではなく、構成の繰り返しの一部にすぎない差異や細部の相違は、全体的な観察により類似性を否定するに足りないと判示した。
問題の所在(論点)
糸捲機ドラムの機能上不可欠な形状(溝の配置等)を意匠の類否判断において考慮すべきか。また、同一構想に基づきつつ寸法的割合や構成の反復回数が異なる意匠間に類似性が認められるか。
規範
意匠の類否は、意匠を全体的に考察して判定すべきである。物品が特定の機能を持つために必要な形状であっても、その溝の配置や形状が意匠の主要部分を構成する場合には、その点を除外して類否を判定することはできない。また、対比される両意匠が同一の構想に基づき、一方が他方の構成の繰り返しの一部にすぎない場合には、細部に相違があっても全体として類似すると判断される。
重要事実
本件意匠は糸捲機ドラム(送糸転子)の意匠であり、円筒面に広狭のある溝を左右双方向に走らせた形状を有していた。引用意匠も同様の構成を有していたが、本件意匠が「長さが直径の約2倍、溝が1周半」であるのに対し、引用意匠は「長さが直径の2.5倍、溝が3周」という差異があった。上告人は、溝の形状は機能上当然の形状であり類否判断から除外すべきであること、また溝の巻数や形成される菱形部分の形状等の相違により美的印象が異なることを主張した。
あてはめ
まず、本件の溝の配置や形状は、単なる基本形状の表出にとどまらず、円筒面に構成される意匠そのものの主要部分をなしている。したがって、機能上必要であるという理由で類否判断から除外することはできない。次に、本件意匠と引用意匠を対比すると、本件意匠は引用意匠に現れた同一構成の繰り返しの一部を現しているにすぎず、両者は同一の構想に属する。円筒の長さや溝の巻数の相違により、溝のない部分の形状や美的印象に多少の相違が生じているとしても、全体として考察すれば、それらは両者の非類似を認定するに足りる決定的な差異とはいえない。
結論
本件意匠と引用意匠は類似しており、本件意匠を旧意匠法3条1項2号(現行法3条1項3号に相当)該当とした原判決に誤りはない。
実務上の射程
機能的形状であっても、視覚を通じて美感を起こさせる主要部分であれば類否判断の基礎となることを示した。特に、反復的な構成を有する意匠において、その一部を切り出したような構成(繰り返し単位の増減等)は、同一の構想に属するものとして類似と判断されやすい点に実務上の注意が必要である。
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