判旨
売買契約において、実質的な需要者が別に存在する場合であっても、売主が当該需要者の信用を欠くとして取引を拒絶し、これを受けた者が自ら買主となることを申し入れ、双方がこれを了承したときは、その者を契約の当事者(買主)と認めるべきである。
問題の所在(論点)
実質的な需要者(D社)が別に存在し、かつ現物の送付先も当該需要者である場合に、自ら買主となる旨を申し出た者(上告人)を契約当事者と認定できるか。売買契約における買主の確定が問題となる。
規範
契約の当事者が誰であるかは、契約締結に至るまでの経緯、当事者間の意思の合致、及び相手方の信用状態に対する認識等を総合的に考慮して判断する。特に、一方が特定の者の信用を否定し、他方がそれに代わって自ら契約主体となることを明示的に申し入れた場合には、その申し入れを行った者を当事者とする合意が成立したものと解される。
重要事実
上告人と訴外D水産株式会社(以下「D社」)との間には、D社を実質的な取引主体とする取り決めがあった。しかし、売主である被上告人が調査した結果、D社には信用がおけないと判断した。これを受け、上告人は自らが買主となることを特に申し入れ、被上告人もこれを了承した。契約上、現物の送付先はD社とされたが、売買契約自体は上告人と被上告人の間で成立した。その後、買主の地位を巡って争いが生じた。
あてはめ
本件では、被上告人がD社の信用を否定したという経緯が重要である。これに対し、上告人は単なる媒介者にとどまらず、自らが買主となることを「特に申し入れ」ており、被上告人もこれを承諾している。この事実関係によれば、両当事者間には上告人を契約主体とする確実な意思の合致が認められる。現物がD社に送付されるという事実は、便宜上の配送先に過ぎず、上記のような明確な当事者確定の合意を覆すに足りるものではない。
結論
上告人を買主とする売買契約が成立したと認められる。したがって、上告人は契約上の義務(代金支払義務等)を免れない。
実務上の射程
契約当事者の確定に関する典型的な事例である。実務上、名義人と実質的需要者が異なる場合、相手方の「信用(属性)」を重視して名義人を選別した経緯があれば、その名義人を当事者として認定する有力な根拠となる。答案上では、意思表示の解釈問題として、特に「相手方が誰と契約するつもりであったか」という視点からあてはめを行う際に有用である。
事件番号: 昭和30(オ)999 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】商法525条(現525条1項)が規定する商事定期行為の解除が認められるためには、当該取引が客観的に、あるいは当事者の意思表示によって、特定の時期に履行しなければ契約の目的を達し得ない性質を有している必要がある。 第1 事案の概要:上告人(買主)と被上告人(売主)との間の代金支払を伴う取引において、…