判旨
未登記の賃借権であっても、後順位の賃借権取得者が先順位の賃借権の存在を知り、または知り得べき状況でことさらに権利を取得した場合には、不法行為者としてその対抗力を否定できず、賃借権確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
対抗要件(登記)を具備していない賃借権者は、同一物件について後に賃借権を取得した者に対して、自己の賃借権の存在を確認する訴えを提起できるか。また、その際に考慮すべき相手方の態様は何か。
規範
不動産賃借権が未登記であっても、後順位の賃貸借契約を締結した者が、先順位の賃借権が存在することを知り、または知り得べき状況にありながら、ことさらに自己の賃借権を取得した場合には、当該後順位者は先順位賃借権の行使を妨害する「不法行為者」に準ずべき立場にある。この場合、先順位の賃借権者は、対抗要件の具備にかかわらず、自己の賃借権をもって当該後順位者に対抗し、その存在の確認を求めることができる。
重要事実
本件係争地について、上告人と被上告人は共に賃借権を有していた。上告人が先に賃借権を取得しており、被上告人はその遥か後に取得したものである。いずれの賃借権も登記を経由していなかったため、原審は対抗要件がないことを理由に、上告人が被上告人に対し自己の賃借権を主張(確認請求)することはできないと判断した。しかし、被上告人が上告人の賃借権の存在を知っていたか、あるいは知り得たにもかかわらず、ことさらに自己の賃借権を取得した可能性(背信性)については審理されていなかった。
あてはめ
被上告人は上告人の賃借権取得より遥か後に権利を取得したものであり、上告人の権利存在を知り、または知り得べき状況でことさらに取得した可能性がある。もしそうであれば、被上告人は上告人の賃借権行使を妨害する不法行為者と認められる。このような者に対しては、対抗要件の欠如を理由に権利を否定されることはなく、上告人は自己の賃借権を主張し、その確認を求める十分な利益を有すると解される。原審が単に登記の有無のみで請求を棄却したのは、不法行為的態様の有無についての審理を尽くしていない不備がある。
結論
未登記の賃借権者であっても、後順位の取得者が不法行為者と認められる場合には、その者に対して賃借権の存在を確認させる利益があり、請求は認められうる。
事件番号: 昭和23(オ)53 / 裁判年月日: 昭和24年9月27日 / 結論: 棄却
ある土地につき実質上地上権を有せず登記簿上地上権として表示されているに過ぎない者は、右土地につき時効により地上権を取得した者に対し、その登記の欠缺を主張することができない。
実務上の射程
本判決は、民法177条の「第三者」の範囲に関する背信的悪意者排除の論理を、賃借権同士の対抗関係(債権対立)に応用したものと位置づけられる。答案上は、対抗要件のない権利者であっても、相手方が不法行為的態様(背信的悪意者等)を備える場合には、確認の利益や妨害排除請求が認められる根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)350 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法242条ただし書にいう権原によって附属させた物の所有権は、公示方法を具備していなくても第三者に対抗することができる。 第1 事案の概要:本判決文には具体的な事案の詳細は記載されていないが、不動産に附属した物(立木等と推認される)の所有権の帰属およびその第三者に対する対抗力が争点となった事案であ…
事件番号: 昭和28(オ)620 / 裁判年月日: 昭和29年8月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の代理人であることを示さず、他人の物を自己の物として売却した場合であっても、所有者が予めその処分行為を承諾していれば、当該売買は有効であり、買受人は直ちに所有権を取得する。 第1 事案の概要:上告人(所有者)は、訴外Dに対し、本件立木について「Dの手において自ら他に売却すること」を委ねる旨の合…
事件番号: 昭和32(オ)355 / 裁判年月日: 昭和36年5月4日 / 結論: 破棄差戻
物件変動の対抗要件としての明認方法は、第三者が利害関係を取得した当時にも存在するものでなければ、これをもつて当該第三者に対抗することはできない。